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第139話 ジェロニモ

 その頃のハジメは、背が高いだけの痩せっぽちな学生で、逞しいジェロニモに夢中になった。同じ大学の先輩だったジェロニモはある日突然インドに旅立った。  いつも勝手に生きているような男。セックスの時以外は優しい言葉などかけてはくれない。愛を誓う言葉など、一度も聞いた事はない。ただハジメだけが夢中になっていた。  貪るような行為。ジェロニモにとっては愛の行為ですらなかったのかもしれない。  初めて愛した男に、距離の取り方などわかろうはずがない。ただ夢中で、一方的に愛を欲しがったのはハジメだった。  ジェロニモの後を追いかけてハジメもインドに行った。  インド、亜大陸。ジェロニモはバラナシにいた。ガンガーが流れる。大麻が自由に手に入る。もっと強い麻薬も手に入る。ジェロニモは麻薬漬けの生活だったから、ハジメもためらい無く麻薬に手を染めた。  最初は恐る恐る軽いガンジャからハシシュ、などに手を出した。ジェロニモはもうヘロインからLSDに、完全に取り込まれていた。もの凄い速さで強力な麻薬に溺れて行く。 「ジェロ、ヤバいよ。もっと軽いのにしなよ。」 ジェロニモは聞く耳を持たない。日本にいる親から結構な金をせしめて麻薬を買い漁っていた。甘い親だった。  突然の死。ジェロニモは自殺した。 一人ぼっちで取り残されたハジメは、もう立派なジャンキーになっていた。裏NGOのマコチンとメドウズに秘密裏にサルベージされ辛く厳しい離脱療法でなんとか生還した。

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