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第141話 衆道

 ある日、母の孤独を慮って父親に食ってかかった。父は 「ハジメ、母さんは私以外の男に愛されているよ。おまえが知らないだけだ。母さんには昔から恋人がいるんだよ。  家の体面を保つために嫁の座に置いている。私達は形ばかりの夫婦だ。」  ハジメは愕然とした。なんて卑怯な。自分はもう普通の結婚なんて考えられない。男色の父を嫌悪していたのに、自分にもその血が流れているのか。  そんな時、秘密倶楽部である麻布の家のゲイパーティに集まる年配の男達から、こんな提案をされたのだ。 「ワシらはもう年なので綺麗に遊びたい。男を侍らせていたずらするのも飽き飽きなのじゃ。  ハジメのような正しい家柄の綺麗な男を鑑賞したい。何も破廉恥な事をするつもりはない。  ワシらはお父上の事もよく存じ上げておる。 ただおまえの恋愛をそばで眺めていたいだけじゃ。どうかな、おまえの恋を眺めさせておくれ。」 「おじ様たちの事は、俺が小さい頃から知ってましたが。衆道という事で父の不道徳もここでは不問なのでしょう。  俺は寝屋を覗かれたりするのはお断りです。 今の所恋人もいないのでここで男娼とイチャイチャするくらいはいいですが。」 「もう激しいセックスなんぞに興味はない。 若い人の恋をそばで見守りたいだけだよ。 純愛が見たいのじゃ。」 「ははは、それは無理かもしれませんね。」 特に期限も何の縛りもある訳ではない。 ハジメはその提案を呑む事にした。  そんなやり取りでハジメはこの麻布の秘密倶楽部の正式な会員に推薦された。厳しい資格検査もハジメには何の問題もなかった。 (男芸者、のようなものか。 俺はもう恋なんか出来ないと思うよ。) そう考えるとこの老人達の望みも他愛のないものに思えた。

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