196 / 240
第196話 友也
ミトの手を思い出しながら自分のペニスを慰める。
「あ、あ、ああミト、イクよっ。
世界で一番愛してる。」
射精した瞬間はそう思うのに、終わった後は、後ろめたさとやりきれない欲望を持て余して自己嫌悪、だ。
夢の中ではミトと優しいキスをして抱きしめる。ミトが僕を欲しがってくれる。ミトから求めてくれる。
「友也大好き。いつも抱いていてね。」
夢の中ではそう言ってくれる。
朝になると虚しさに気が狂いそうだ。
(いつでも遊びにおいで、って言ってた。
ホントに行ってもいいのかな?)
あまりにつらいからいずみちゃんに会いに来たんだ。でも欲しいのはいずみちゃんじゃない。
いずみちゃんのベッドで、ミトの事を思いながらセックスした。
「ごめんね。」
腕の中のいずみちゃんが不思議そうに見る。
「なんで謝るの?結婚して、とか言ってないよ。
言う前に断らないで。」
(やっぱりミトに会いにいこう。)
「いずみちゃん帰るね。」
(僕は酷い奴だ。いずみちゃんを抱けるんだから。
僕とペニスは別人格だと思いたい。)
ピンポン。友也はミトの家の立派な門のベルを鳴らす。赤いペンキの名残が残っている。ロジはペンキの跡を記念に取っておこう、と言ったらしい。やはり、変わり者だ。
「こんにちは。山田友也です。」
ドアが開いてミトが門を開けに来た。
ともだちにシェアしよう!