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第196話 友也

 ミトの手を思い出しながら自分のペニスを慰める。 「あ、あ、ああミト、イクよっ。 世界で一番愛してる。」 射精した瞬間はそう思うのに、終わった後は、後ろめたさとやりきれない欲望を持て余して自己嫌悪、だ。  夢の中ではミトと優しいキスをして抱きしめる。ミトが僕を欲しがってくれる。ミトから求めてくれる。 「友也大好き。いつも抱いていてね。」 夢の中ではそう言ってくれる。  朝になると虚しさに気が狂いそうだ。 (いつでも遊びにおいで、って言ってた。 ホントに行ってもいいのかな?)  あまりにつらいからいずみちゃんに会いに来たんだ。でも欲しいのはいずみちゃんじゃない。  いずみちゃんのベッドで、ミトの事を思いながらセックスした。 「ごめんね。」 腕の中のいずみちゃんが不思議そうに見る。 「なんで謝るの?結婚して、とか言ってないよ。 言う前に断らないで。」 (やっぱりミトに会いにいこう。) 「いずみちゃん帰るね。」 (僕は酷い奴だ。いずみちゃんを抱けるんだから。 僕とペニスは別人格だと思いたい。) ピンポン。友也はミトの家の立派な門のベルを鳴らす。赤いペンキの名残が残っている。ロジはペンキの跡を記念に取っておこう、と言ったらしい。やはり、変わり者だ。 「こんにちは。山田友也です。」 ドアが開いてミトが門を開けに来た。

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