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第197話 音楽

「友也、いらっしゃい。嬉しいな。来てくれたんだね。」 ドキドキしながら訪ねて来たんだけれど、ミトの弾む声に勇気づけられた。  なんとミトがハグしてくれた。ミトはいい匂いがする。 「今日はまだ、ロジが帰って来ない。研究室に行ってる。友也は行かないの? ロジと一緒に研究とか出来るなんて、カッコいいね。僕もロジのお手伝いしたいな。  友也は頭がいいんだね、あの大学に入れるなんて。」 (ミトが僕だけのために、こんなにおしゃべりしてくれる。夢のようだ。後で思い出して楽しめるようにミトの顔もハッキリ目に焼き付けておかなくちゃ。)  友也は溢れる想いに溺れそうだ。 リビングにタカとハジメが入って来た。半分ここに住んでいるようなものだ。書斎の奥の部屋から出て来た。相変わらず仲がいい。 「あ、いらっしゃい。友也くんだよね。遊びに来てくれたんだ。何か音楽を聞こうか?そこのCDの棚から好きなの選んで。」  棚にはギッシリCDが並んでいる。友也は70年代から80年代の音楽が好きなので、棚を見てみた。 (何だこれ?シブい、渋すぎる!僕の好きなのばっかりだ。) CDを一枚手に取った。ハジメが受け取ってかけてくれる。 「スティーリー・ダン、いいねぇ。 若いのにこれ好きなの?」 「はい、ドナルド・フェィゲン、好きなんです。」 「俺も好きだな。学生の頃よく聞いたよ。」 思いのほか話しやすいハジメに友也は嬉しくなった。筋肉の逞しいハジメは怖い人か、と思ったが意外と繊細な人みたいだ。 「友也は何か、楽器とかやらないの?」 「えーと、ピアノを少し。」 小学校の頃はピアノを揶揄われた。

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