199 / 240
第199話 音楽
久しぶりに聞く音楽は思いのほか、友也の気持ちを高揚させた。
「ここにあるCDは誰が選んでるの?」
「えーと、ロジかな?それと
ここに来る人は誰でも好きなCDを持ち込んで聞いてるから、そのまま置いて行っちゃう。特に誰のもの、ってわからないなぁ。
友也はこのCDが好きなの?」
「うん、懐かしいっていうか、懐かしい人を思い出す。」
ミトが隣に座って腕を組んで来た。なんか近いなぁ。緊張する。ミトはスキンシップが好きなのだ。
「なんか、都会的な大人のイメージの曲だね。
思い出すのは友也の好きだった人?」
「えっ、違うよ・・」
「友也はピアノ弾けるんだね。ロジの書斎にピアノ、あるよ。弾いてみる?」
「無理だよ。何年も鍵盤触ってない。」
そこにロジが帰って来た。
「やあ、友也いらっしゃい。」
友也はサッと緊張した。
「あのね、ロジの書斎のピアノ、弾いてもいい?」
「ミトが弾くのか?調律はしてあるから弾いていいよ。」
嫌がる友也を書斎に連れて行った。積み重なった本の奥にスタンウェイがデンと鎮座していた。
連弾でもするみたいに友也と並んで座った。
「音出してみよう。」
ミトがショパンの別れの曲、を弾いた。
「ミト、弾けるんだね。」
「うん、暗譜で弾けるのはこの曲だけ。他は楽譜が必要だ。」
ともだちにシェアしよう!