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第201話 いずみちゃん
友也は、自分の事がわからなくなっていた。あれほど恋焦がれたミトに近づけたのに、現実はまた遠ざかってしまった気がする。
妄想の中では自分だけのミトだったのに、実際は、自分の手の届かない人だ、と再確認させられただけだった。
ミトは恋人や仲間たちにガッツリ囲まれて、益々遠い人になった。
「友達だって言ってもらった。
でもそれじゃダメなんだ。」
手の届く存在だと思えたから、もっと近くに行きたいと高望みするようになってしまった。以前ならハグしてもらう、なんて夢のようだったのに
今はもっと、欲しい。友也はミトを手に入れるためなら何でもする気でいた。
「友也、何でこの頃私のアパートに来ないの?」
いずみちゃんにバッタリ出会って言われた。あれ以来避けていたのに。
「ねえ、私たち付き合ってるんだよね。
もっとたくさん会いたいよ。」
いずみちゃんは当たり前の事を言ってるのに、友也は何故かゾッとしてしまった。
「僕、そんなつもりなかったのに。なんか期待させた?」
「アタシ生理が来てないの。」
(どういうことだ?子供が出来たってこと?)
「親に会ってくれる?」
「えっ?えっ?僕の子供?」
友也は、言ってはいけない言葉を口にしてしまった。
(二回セックスしただけだよ。なんで?
こんなに簡単に出来ちゃうものなの?)
どうしよう、どうしよう。
「いずみちゃん、ちょっと待って。
僕まだ学生なんだよ。」
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