202 / 240
第202話 不安
「いくつになったの?もう大人でしょ。
セックス出来るんだから。」
「今26才だけど、親と住んでるし、就職もしてない。」
「一流大学出てるんでしょ。大学院生だったよね。就職出来るんじゃない?」
友也は、自分の人生が他者によって決められてしまうのを恐れた。現実逃避してしまいたい。
いずみちゃんのアパートでまたセックスしてしまった。したくないのに流されて行く。
(ミトに浄化されたい。ミトなら僕の汚れた現実を何とか救ってくれるはず。)
根拠のない妄想に浸る。
いずみちゃんの部屋で、裸で抱き合いながらここから逃げる事ばかり考えていた。
ハジメとタカが自分達のマンションに帰って来た。家を特定されてミトに危害を加えられる心配も、少し落ち着いて来た。
二人は、これからの計画を話し合った。
「何か面白い事をやろうと、いつも考えて生きて来たけど。 タカは学芸員になりたいんだっけ、博物館の。」
「うん、そう。面白そうでしょ。
ずいぶん前だけど、うちの教授のコネで国立博物館の倉庫を見学する機会があった。面白いものがたくさんコレクションされている。展示されてるのはそのなかのごく一部だ。興味深いよ。」
タカの目がキラキラしていて魅力的だ。抱き寄せて口づける。
「ハジメ、ダメだよ。何も考えられなくなっちゃう。」
ハジメの広い胸に抱きすくめられた。
「タカが俺を忘れているからさ。」
「忘れてないよ。」
タカの将来にハジメがいないような気がした。
この寂しさは、なんだ?
いつも二人で愛し合う。いつも一緒にいる。
タカは幸せそうだ。
(でも、俺には何がある?)
ともだちにシェアしよう!