203 / 240

第203話 高任傑

 BAR高任(たかとう)。ハジメの従兄弟、傑(すぐる)の店。タカと来るのは初めてだ。 「やあ、いらっしゃい。 今日は嫁さんと一緒かい?」  カウンターの中に傑がいた。バックバーが凄い。見たことの無いような酒瓶が所狭しと並んでいる。ジャズとシングルモルトの店。いい雰囲気だ。しかし客がいない。 「マッコイ・タイナーがかかってるね。 レコード盤見るのも久しぶりだな。」 「ハジメ好きだったな。2020年に亡くなったけど。  何飲む?」 「お勧めは、アイラモルトか。俺はラガブーリン。常温で。」  タカは困った顔をした。ウヰスキーの事をよく知らない。 「アイラはクセが強いから、ブナハーブンあたりをトワイスアップで飲むといいよ。」 「タカ、ウヰスキー飲めるか? それとも何かカクテルにするか?」 「大丈夫。お勧めのブナハーブンにするよ。 トワイスアップって?」 「常温のウヰスキーと常温の水を半々にして飲むんだ。香りが開いて飲みやすいよ。」  店は大人のムード。異空間に迷い込んだみたいだ。緊張しなくても大丈夫。この店はスマートなタカによく似合ってる。 「傑さん、ハジメにそっくりだね。」 髪も長くて後ろで一つにまとめている。二人、顔がよく似ている。ハジメの方が少し筋肉質。がっしりした肩とか。やはり似ていても見分けはつく。 「子供の頃は双子と言われたな。」

ともだちにシェアしよう!