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第204話 傑

「ねぇねぇ、ハジメ?」 小さな声でタカが聞いた。 「傑さんは、どっち?ノンケ?」 傑は笑って 「どっちだと思う?」 「多分、ゲイだよ。オレにはわかる。」 「正解!」 「ほんと?そんなところもそっくりなの?」 傑は笑っている。 「恋人はいるの?」 タカの踏み込んだ質問に傑は 「いないよ。昔から惚れてるのはハジメだけ。 私は自己愛が強いんだ。自分が一番好きなのさ。」 ハジメが苦笑いしている。 「俺を抱いたら、自分を抱いてるみたいな気分になりそうだろ。」 ハジメは言った。 「だから触らない。」  タカは傑の気持ちが少しわかる。似ているんじゃなくてハジメに寄せているのだ。  いくら似ていたって、髪の形まで同じにする必要はない。 「でもハジメほど筋トレはしない。 君はいいね。好きなだけハジメに抱かれて。」 「えっ?」  ハジメと傑が決定的に違うのは、そのまとっている空気だ。 傑は、多分一人でいるのが好きなんだろう。 孤独が染み付いている。  タカはハジメの手を握った。 初めて会った時、ハジメにも、寂しさの影が見えた。それは胸を掴まれるような、悲しみのような、そしてたまらなく切ない、そんな雰囲気だった。好きにならずにいられない。

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