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第206話 傑

 二人の部屋に帰って来て、激しくハジメに抱かれた。 「タカ愛してる。俺にはタカがいる。」 強く抱かれて、何故か涙が止まらない。 「バカだなぁ、なんで泣く? 傑の事なら気にするな。昨日今日の付き合いじゃないんだ。お互いに違う生き方をして来た。 これからも交わることはない。」  タカは、ハジメの愛撫に溺れていく幸せを、独り占めしている自分が後ろめたい。それでも蕩けさせてくれるハジメに我を忘れる。 「タカ、おまえが最後の恋人だよ。 ずっと。これからも。」  傑の孤独を思う。孤独の中に一人きり。 タカはハジメに愛されながら、孤高の人を思う。  高校生の頃のハジメと傑。 家が近所で高校も同じ。少しワルな二人。  二人が揃えば敵はいなかった。二人が共に前だけを見ていた頃は楽しかった。二人で悪い事ばかりやって親を困らせた。本当は自分たちをコマのように扱う祖父様(じいさま)に復讐したかった。  絶対権力を持つ存在にいつもぶつかって行くのはハジメだった。剣道師範の祖父様(じいさま)に気を失うほど叩きのめされるのもハジメだった。強くないのにいつもぶつかって行く。  ボロボロになって傑の胸に帰って来る。優しく慰めるのはいつも傑。  二人は顔がよく似ていた。自己愛か、お互いを必要としていた。高校生の頃は、自分の気持ちを直球で相手にぶつけていた。でも何かが二人を止めている。そんな気持ちで大人になった。大学で別の道を歩き出した。

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