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第216話 酔っ払い

 もう午前2時。 気がつけば朝までやっている事もある。基本5時位までの営業時間は、警察から許可を取っている。バーは風俗業だが、隣に座って接待しなければ24時間営業も許可される。  傑一人でやっているので、開店も遅いが閉店も遅い。深夜に入って来る客は多い。ゲイの人間だけが来る訳ではない。 「レオンは今日は一人なの?」 このイケメンホストはレオンと言った。 「うん、なんか疲れちゃって、サボった。」 「店が困ってるぞ。指名を捌ききれなくて。」 「マスター、同伴してよ。」 「私が行ったら、レオンはゲイだって噂がたって、女性のお客さんが来なくなるよ。」 「へっ、自信家だな、マスター。」  レオンは年配の太客に付きまとわれて、逃げているらしい。 「大金持ちの不動産王、あ、女王か。 タワマン売って儲けてるんだって。 おばちゃんなんだ。60才。バージンだって。この歳まで。僕に処女を捧げるって、言うんだよ。」 「太客なら、一回くらい抱いてやれば?」 「嫌だ!絶対嫌だ。気持ち悪い。傑、助けて。」  きっと寂しい人なんだろう。 やり手の不動産王。女性がのし上がるのは並大抵の事では無かっただろう。同情してしまう。このイケメンに少しでも優しさがあったら、と。  レオンはかなり酔っている。 「そろそろ閉めたいんだけど、レオンは帰れるか?」 「無理!送って。近くのホテルかどこか。 このまま放り出すの?傑、そんな奴だった?」  マスターから傑に呼び方が変わっている。随分懐かれたものだ。もう客も来そうにないから店を閉める事にした。

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