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第221話 レオン
明るい陽射しが顔にかかった。傑に抱きついてレオンが眠っている。愛しい気持ちで髪を撫でた。
「ああ、傑、おはよう。」
「もう午後も遅い時間だ。秋の日は暮れるのが早い。レオン、仕事は?」
仕事をサボっている。傑の部屋から出て行かない。居つかれてしまった。バーを手伝ったり、手伝わなかったり、気まぐれだ。
[ディアボラ]からの着信が店の留守電に限度一杯まで入っていた。
[クラブ ディアボラ]は、六本木で一番のホストクラブだ。レオンはその店のナンバーワンだったはずだ。
「仕事、行きたくない。」
「いいのか?
おまえを待ってる客がいるだろ。」
「それより、傑はあの日以来抱いてくれない。そっちの方がつらい。」
「もう、自分の家に帰れよ。」
レオンは涙の滲んだ眼をして、身支度をして出ていった。
(サヨナラのキスくらいくれても良かったのに。)
少し寂しくもあり、傑は戸惑っていた。レオンが家にいたのは1週間ほどだった。
(この喪失感は何だ?)
それからしばらくは何事もなく過ぎて行った。レオンが出て行ってから、ひと月ほどが過ぎた。
いつものように、夜になって店を開けると今夜は、小鉄と派手な男が入って来た。男は怒っているようだ。
「傑ちゃん、私、止めたのよ。傑ちゃんは何も関係ないって。」
「君が高任傑か。
私は六本木で[クラブ ディアボラ]をやっている
円城寺という者だ。」
差し出した名刺には、円城寺 隼人 という名前と クラブ ディアボラ と書かれていた。
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