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第223話 レオン

「ドアを開けるから、ちょっと待てよ。」  ドアの内で抱きついてまたキスしてきた。レオンを抱きしめて激しいキスを返しながら (ああ、これを待ってたんだ。) と気が付いた。  この所、いつも何かを忘れているような焦燥感がつきまとっていた。何かが足りない。この空虚さは何だ?と、いつも頭から離れない葛藤があった。  部屋に入ってレオンはジャケットと着ていたシャツを脱いだ。  裸の上半身は右肩から手首までタトゥーが入っていた。 「どうしたんだ?この前は入ってなかったよな。」 「うん、これを入れる為に何処にも行かないで隠れてた。お客さんの1人に女性の彫り師がいるんだ。その人の家でずっと、休みながら彫ってもらってた。」  抱き寄せて、裸の上半身を愛撫しながら、熱い口づけをかわす。 「凄いな。何が彫ってあるんだ?」 「フフフ、全部、傑への愛の言葉、だよ。」  一晩中貪るように愛し合った。 「傑、こんなに簡単に恋に落ちてしまうなんてボク自分が信じられない。いろんな人の慰み者になってきたかもしれないけど、傑にマブを証明するために、墨を入れたんだ。」  彫り師のグレースは、優しい女でレオンの気持ちを丁寧に図柄にしてくれた。  故郷(くに)ではシャーマンでもあるというギニア人だ。

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