223 / 240
第223話 レオン
「ドアを開けるから、ちょっと待てよ。」
ドアの内で抱きついてまたキスしてきた。レオンを抱きしめて激しいキスを返しながら
(ああ、これを待ってたんだ。)
と気が付いた。
この所、いつも何かを忘れているような焦燥感がつきまとっていた。何かが足りない。この空虚さは何だ?と、いつも頭から離れない葛藤があった。
部屋に入ってレオンはジャケットと着ていたシャツを脱いだ。
裸の上半身は右肩から手首までタトゥーが入っていた。
「どうしたんだ?この前は入ってなかったよな。」
「うん、これを入れる為に何処にも行かないで隠れてた。お客さんの1人に女性の彫り師がいるんだ。その人の家でずっと、休みながら彫ってもらってた。」
抱き寄せて、裸の上半身を愛撫しながら、熱い口づけをかわす。
「凄いな。何が彫ってあるんだ?」
「フフフ、全部、傑への愛の言葉、だよ。」
一晩中貪るように愛し合った。
「傑、こんなに簡単に恋に落ちてしまうなんてボク自分が信じられない。いろんな人の慰み者になってきたかもしれないけど、傑にマブを証明するために、墨を入れたんだ。」
彫り師のグレースは、優しい女でレオンの気持ちを丁寧に図柄にしてくれた。
故郷(くに)ではシャーマンでもあるというギニア人だ。
ともだちにシェアしよう!