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第228話 礼於

 家に帰って来た。 傑は、これでもう円城寺が付きまとうことはないだろうと思った。奥の老人たちの存在を知らないはずはない。わきまえている人間なら、もう近づかない。 「レオンは、ずっとここにいていいよ。」 抱き寄せてその顔を見る。 (これがギフトか。神の与えてくれた美貌。 素直さが顔に出るんだな。) つくづく綺麗な顔をしている。 「ボク顔のことばっかり言われるの嫌なんだ。 中身がない人間みたいでしょ。」 「そんな事はない。レオンの心が顔なんだよ。 その表情が好きなんだ。」  いつまでも見つめていたいと思う。 「ボクもずっと傑が好きだったんだけど、 傑のその目が好きなの。」 「私の目? 一重で細い切長なこの目が好きだって? 変わってるな、レオン。 ハジメも似たような目をしてるよ。 じゃあ、ハジメでもいいのか?」 「違うよ。ハジメちゃんは似てるけど違うもん。 それからボクの名前、本名、言ってなかったね。 れおっていうの。んは付かない。 石崎礼於。ホストの名前はもう嫌だよ。 礼於って呼んで。」  胸に抱き寄せて耳元に「礼於」と囁いた。 礼於が首に抱きついて 「傑、大好き。初めて見かけた時からずっと好きだったの。」 (可愛い。ロジャー先生がミトを愛するように、ハジメがタカヒロを愛するように、私は礼於を愛している。誰にも邪魔はさせない。)  ずっと孤独だった。孤独を愛して来た。 ハジメを愛して心に閉じ込めて、自分を抑えてきた。寂しかった。でも寂しさだけで愛したんじゃない。  礼於は特別。礼於が心の中のハジメの鎖を解いてくれた。今では礼於がすべてだ。ハジメはタカに譲ろう。礼於がいれば何もいらない。 「礼於、キスして。」 「傑大好き。」 優しいキスをした。激しく愛し合う時もある。静かに抱き合うのもいい。  礼於の肩のタトゥーを優しく愛撫した。

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