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第174話 友也

 山田友也は自分の気持ちを、どうしていいのか わからなかった。  最初は紅茶の会社のポスターだった。初めて見たミト。一瞬で心を奪われた。ポスターに写ってるミト、という人。年令はわからないが男なんだろう。友也は自分と同じ世代だろうと思った。 (ちょっと可愛いな。男かな?芸能人か。自分には関係ない、違う世界で生きてる人だ。)  そう思うのにポスターから目が離せない。いつも行くスーパーマーケットの入り口、カートがたくさん置いてある所の壁に、ポスターは貼ってあった。今日はカートはほとんど出払っていて、そのポスターは目立っていた。  人目が無くなるのを待って、そのポスターを盗んだ。ミトの顔の部分だけは傷つけないように、急いで破り取ってきた。生まれて初めて、盗みを働いた。  自分の部屋のベッドの横の壁にポスターを貼った。ミトと見つめ合う。ポスターのミトに口づけをした。 (何だろう、この気持ち。ミトが頭から離れない。こっちを見て微笑んでいる。僕だけを見てる。)  ジャンプしてお腹が見えている写真。上目使いのイタズラっぽいセクシーなミト。裸にネクタイの誘うような色っぽいミト。  ジーパンのお腹から覗く綺麗に割れた腹筋。 ポスターは真ん中のミトを囲むようにいくつかのスナップショットが並んでいる。 (ああ、こんな人、今までどこに隠れていたんだ?)  その時からミトに心を鷲掴みにされた。 友也はミトが、自分の大学の教授の嫁だなんて知らなかった。そんな、身近にいるなんて。  もちろんゲイだという事も。 寝ても覚めてもミトのことを考えている。 何も手につかない。

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