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第230話 バー高任

 この頃、礼於は傑の店を手伝っている。礼於のおかげで女性客が増えた。礼於は元々接客が好きなようだ。  傑のマンションに住み着いている。今まで住んでいた、円城寺が契約したマンションには帰りたくないらしい。 「あそこには何も必要な物は無いんだ。全部、お客さんが買ってくれた物だし、店用の服やアクセサリーも思い出したくない。」 「自分の大切な思い入れのある物はないのか?」  礼於の、物に執着しない物欲の無さ、に驚く。 こだわりがないのか?  礼於はホスト時代を忘れたい。接客して指名が増えて、いろいろな贈り物を貰った。それらは自分がどうしても欲しい物ではない。  だから物に執着がないらしい。高級時計、高価な宝石の入ったピアスや指輪ももう要らないと、言っている。 「ボクは何もない裸のボクを傑にあげたい。 このタトゥーに大切なメッセージは全部はいっているから。」 そう言って抱きついてくる。傑は愛しくてならない。 (指輪なら私が買ってやる。)  ずっとハジメだけを待っていた、今までの人生は何だったんだろう。いくら待っても手に入らない男。でも、それで諦めて礼於に乗り換えたのではない。  礼於に出会うために今まで生きてきた、とさえ思えるのだ。

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