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第2話

「暇そうじゃな」 夜、上官から銃の手入れを命じられ、義三郎はひとり武器庫にいた。 一陣の風と共に今まで嗅いだことのない良い香りがふわり、と鼻をかすめる。 少し高めの男の声のする方を見ると、そこには少尉の階級章をつけた軍服を身に纏っている若い男がいた。 褐色の肌色で黒黒とした大きな瞳と整った顔立ちを持ったその男は、男だと分かっているのに言葉にし難い不思議な色香が漂っている気が義三郎にはした。 「暇ではありません。銃の手入れをしております」 仕事が終わらなければ上官に何を言われるか。 義三郎はすぐに視線を男から手入れ中の武器に移した。 「……では、少尉のわしが命ずる。お前は今からわしの相手をせよ」 「は……??」 男は義三郎から銃を取り上げ、傍らに置くと真向かいに座ってくる。 「命じた者は誰だ」 「小林曹長です」 「ならば明朝わしから小林に話しておく。もし明日、小林にとやかく言われてもお前はわしの言う通りにしただけと答えればよい」 「……はぁ……」 会話は常に一方通行。 しかしそれは口数の少ない義三郎にとってよくある状況だった。

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