翌日。 義三郎は上官に呼び出され、今日付で伍長に昇進して朝比奈少尉の下に仕える事になったと言われた。 「お前があの御方に選ばれるとはな。あの御方はな……」 上官は聞いてもいないのに少尉の事をべらべらと話し出す。 士族出身で高貴な家柄の朝比奈少尉は士官学校を卒業後、すぐに少尉としてこの地に赴任する事になった事、士官学校時代からその美しさと天真爛漫な人柄が広く知られていた事を義三郎は聞かされた。 「まぁ、せいぜいあの御方に喰われないように気をつけるんだな。知っているだろう？あの御方にまつわる噂話を」 「…………」 それに本人が心を痛めている事を貴殿は知らないのか、と義三郎は思ったが、それを口にしては面倒臭い事になる事を知っていたので何も言わずにいた。 上官の部屋を出ると、義三郎は1度部屋に戻り、荷物をまとめてから少尉の待つ部屋に向かった。 今日から部屋も変わると聞いていたのでどんな部屋になるのかと思っていたら、少尉と同室になっていた。