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第11話

「はい」 「あまり長居は出来ぬから、早速入るぞ」 「承知いたしました」 敵襲が来ないか気がかりではあったが、義三郎は少尉にならい軍服を脱いだ。 近くに持ってきていた銃を置き、少尉の隣に腰を下ろす。 「お前、昨日は薄暗くてよう分からなかったが、なかなかに白き肌じゃな。それにたくさんの傷がある……」 すると、少尉がすぐに義三郎の身体に触れてきた。 「背はまっさらなのに、こちら側はあちこち傷だらけじゃな。戦場から逃げずに戦い続けてきたのが分かるぞ……」 身体を撫でてくる手が心地良い。 「わしの身体を綺麗だと言うておったが、お前の身体の方がずっと綺麗じゃ」 「そんな事はないと思いますが……」 目の前に昨日も見た、芸術作品のような美しい男の身体があった。 筋肉質な己の身体より幾分か華奢には見えるものの、それなりに鍛えてきたように義三郎には見えた。 「昨日出逢うたばかりじゃが、お前の身体と触れ合うと何故か懐かしき心地がして落ち着く……」 その胸が自分のと重なり、昨日も感じたいい香りが鼻をかすめる。 「少尉殿……」 離れなくては、また本能を抑えきれなくなる。 そう思った義三郎は少尉から離れようとしたが、少尉の腕が既に背中にあって叶わなかった。 「しばしの間、こうしていたい……」 耳元で囁くように言われ、背筋が震えてしまった。 顔が見えない事を良い事に、義三郎は目を瞑りグッと口を一文字に結んで少尉の匂いを感じぬようあまり呼吸をしないようにする。 辺りは川のせせらぎが聞こえるくらいで、心臓の音が少尉に聞こえてはいないかと気になった。 (長居出来ぬと聞いたのはおれの記憶違いか?いや、そんなはずは……) この時間が早く終わって欲しい。 そうでなければ白昼堂々昨日のようなみっともない姿を晒してしまうかもしれない。 時間にして5分ほどの事だったが、義三郎には数時間経ったような感覚だった。 「千夜」 帰り際、少尉はまたふたりで来ようと言って義三郎に接吻してきた。 「戻ったらわしはやらねはならぬ事がある。続きは夜じゃ」 「……承知いたしました」 今夜も交合うという事なのだと理解した義三郎は、不安な思いを抱えながらも断る事など出来ず返事を返していた。

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