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第12話

駐屯地に戻ると、朝比奈少尉とは夕飯時まで顔を合わせる事がなかった。 義三郎は伍長として受けなければならない訓練が明日から始まる為、今日は明日に備えて休んでいるように言われていた。 「…………」 休日にする事は掃除と書庫で本を読む事だった義三郎は、夜までの時間をいつも通り過ごした。 その帰り、義三郎は誰かと話をしている少尉を窓越しに見かけた。 自分の知らない、真剣な顔つきの少尉にあの人もああいう顔が出来るのか、と思った。 夕飯は少尉が部屋に戻って来るのを待ってから一緒に食堂に向かい、隣に座って食べた。 待っていてくれて嬉しい、と少尉に笑顔で言われ、義三郎は部下として当たり前の事をしただけだと思っていたので顔には出さなかったが心の内では困惑していた。 食堂での義三郎は周囲から少尉のお手付きになった男という目で見られているのを感じたが知らないふりを決めこんだ。 そして迎えた夜。 部屋は少尉が実家から持ってきたという洋燈で照らされていて、その隣には香炉が置いてあり、少尉が部屋に戻ってすぐに香を焚いていた。 「昨日よりは明るいだろう?」 「はい」 昼間ほどではないものの義三郎は恥ずかしさを感じ、それと同時に、少尉から香るいい匂いの中に香のかおりが混ざっている気がした。 「千夜…」 布団に倒されながら、朝比奈少尉から接吻される。 それはすぐに口吸いにかわり、義三郎は少尉の求めに応じていた。 息遣いがだんだん淫らになっていく少尉。 自分も同じようになっている気がした。 「今宵も愉しもうぞ」 「……承知いたしました」 これは、命令。 それ以外の何物でもない。 けれど、快楽の道具として使われていた事のあるこの身体は、心とは全く反対の反応をし続けた。 触れる事、触れられる事への悦びに満ち溢れていた。

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