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第13話
「千夜……ッ……」
あの頃の自分はどうだったのかよく思い出せない。
今と同じだったかもしれない。
そうならば、今も昔も浅ましくて情けない。
そう思っているのに、自分の上に跨り、繋がろうとしている男の腰を掴み、思い切り突き上げてしまっていた。
「少尉殿……っ……!!」
身体を起こし、うっすらと汗の滲む首筋に顔を寄せると、少尉から立ちのぼる匂いで何もかもがどうでもよくなってしまう。
「あっ、んぁっ、あぁぁッ!!!」
少尉と己との腹の間で少尉の精が爆ぜる。
そこで動きを止めようとすると、お前がまだ達していないと言われ、義三郎は昨夜同様果てるまで行為を続けていた……。
日中は訓練、夜は朝比奈少尉の相手。
若干の寝不足状態ではあったものの、義三郎は戦いのない落ち着いた日々を過ごしていた。
しかしそれは半年ほどで突然終わりの時を迎えた。
大陸への出撃命令が下ったのだ。
「千夜」
前線に送られた日の夜。
義三郎は朝比奈少尉と共に天幕の中で夜明け前の作戦実行前に仮眠をとろうとしていた。
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