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第14話

「どうしました?」 「わしにはな、故郷に歳の離れた弟がおるんじゃが、もしわしがこの戦いで死んだとしたら弟の事を信頼しているお前に頼みたい」 突然の言葉に、義三郎は驚きを隠せなかった。 「何故そのような事をお考えになられたのですか?貴方がおれより先に死ぬなど決して有り得ないですよ」 積み重ねてきた半年の間に、義三郎は少尉を信頼し、自らの思いを伝えるようになっていた。 「もしも、の話じゃ。わしとて死ぬつもりはない。お前と共に生きて帰るつもりでおる」 少し苛ついた口調で話した義三郎に対し、少尉は笑顔を見せる。 「今日、弟の夢を見てな。それで気になってしまったんじゃ。父上も母上も弟が幼き頃に病に斃れておって、わししか頼れる身内がおらなんだ。それ故、お前に話しておきたかった。お前はわしにとって最も信認している男じゃからな」 「…………」 ありがたい言葉を言われたのに、義三郎は胸の奥がざわざわする、嫌な感じがした。 「貴方の事はおれが必ず守ります。ですからそういう話はもうこれきりにしてください」 死ぬとしたら自分なのだ、と義三郎は自分に言い聞かせる。 「そうじゃな、お前にそんな辛そうにされるとわしも心苦しい。済まなかったな、千夜」 「……いえ、差し出がましい事を言ってしまい申し訳ございません……」 話は終わったのに胸の嫌な感じは消えないまま、作戦の時を迎えていた。

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