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第15話
「よし、あと少し、あと少しじゃ!!」
作戦は予定通り遂行され、敵基地の陥落も時間の問題になっている時だった。
敵側が最後の抵抗を見せ、わずかな兵で突撃し、義三郎たちの隊に攻撃をしかけてきた。
「朝比奈少尉!!!」
義三郎は少尉を守る為に応戦したところ、左脚を撃たれてその場に倒れこむ。
「千夜ッ!!!」
それを見た少尉は反撃しながらも動けなくなった義三郎を守ろうとし、腹部を撃たれてしまった。
「しょうい……ッ……」
義三郎を庇うように重なって倒れた朝比奈少尉。
義三郎は這いつくばりながら持っていた手拭いで腹部からの出血を試みた。
「何という愚かな事をしたんですか、貴方は」
「……すまない……」
何とか止められたとはいえ傍に血溜まりが出来るほどの大量の出血をしている少尉の声は苦しそうで、息も絶え絶え、という状態だった。
そんな中、基地は無事に陥落し、少尉と義三郎は近くの野戦病院に運び込まれていた。
義三郎は左脚の切断は免れたものの、今まで通りに歩く事が出来なくなると医師に告げられ、戦場に出られない身体になってしまった。
一方、少尉の傷は深く、義三郎はいつどうなってもおかしくない状態だと上官から聞かされた。
「そんな……」
少尉との関係を知っていた上官は、面会謝絶になっている病室に義三郎を連れて行ってくれた。
「少尉殿」
苦しそうにしている顔。
何かの間違いであって欲しかった。
「……せん……や……」
か細い声が微かに聞こえたので、義三郎はベッドに跪き、耳元に顔を埋めた。
「ここにおります、朝比奈少尉殿」
「大事ないか」
「はい」
「よかった。ならば……」
たのんだぞ。
と、息を吐きながら言った後、少尉の呼吸は弱まっていき、やがて聞こえなくなった。
「少尉殿……」
まだ温かい身体を、義三郎はきつく抱擁した。
何故、こんな事に。
死ぬのは自分のはずだったのに。
義三郎は声を殺して泣いた。
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