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第一章 5

 紺のブレザーにグレイのスラックス。T高校の制服が良く似合っていた。  青系のチェック柄のネクタイは崩し気味で、ずいぶんと大人っぽい雰囲気だった。  あの満面の笑顔はなく、何処か陰りのある顔をしている。  背は見上げるようだし、短かった前髪も伸びて、確か禁止されている筈のツーブロックにしている。少し茶色味が強い。    あの集団のなかでは派手な方じゃないが、やはり僕とは違う人種のように思えた。 「ボクたちも仲良しこよししましゅか~」 「ばーか」  そんな言葉が遠くに聞こえ、肩をどつき合っているのが滲んで見えた。 「城河 樹と知り合い?」  隣で一緒に去っていく背中を見送りにながら、さっきまでよりかなり低いテンションで言った。 「え?」  大地がその名を口にしたことに酷く驚いた。 「昨日も見てたよね?」 「えっと、家近所だから。……日下部くんは……いっ……城河くんのこと知ってるの?」  何故か、幼馴染みとも、『いっくん』とも言えなかった。 「中学同じ。同クラにはなったことないけど──」  そう言えば、大地もK中だったと今更ながらに気づく。 「──有名人だから」  と、苦笑い。 「え、有名人?」  詳しく聞こうとして。 「あ、やべ。早く行かないと」  大地が突然走りだした。  ホームルームは八時四十分から。  正面の校舎についている時計は既に三十分を過ぎている。  もうすぐ五分前の鐘がなるだろう。  

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