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第七章 4

「あ、そうだ。ボクも誕生日プレゼント。急だったから、ちゃんと選べなかったんだけど」  そう言ってボクの手をそっと取って、何かを握り込ませた。 「来年はちゃんと考えて選ぶから、ね」  とウィンク。  開くと、ヒーローものの小さいフィギュアだった。 「え」  どうコメントしていいのかわからない。  でも、昔樹が観ていた、虫を象ったヒーローに似ている。 (懐かし……) 「げっなんだ、それ。さっきコンビニで買ってたのそれかー。っていうか! 来年もなんて、図々し過ぎじゃないすかー」 「だいくん、いちいちうるさいよー」 「だいくんってゆーなー」 「ありがとうございます、メイさん」 「いえいえ、どういたしまして──あ、そう言えば、樹も明日、誕生日だっけ。呼んで一緒に祝っちゃう~?」 「え、城────」 「えっ。だめだめっっ、いっくん絶対に来ないから~むりむりむりむりむり~~っ。あ…………」  二人が固まっている。 (あー。  今まで気をつけてたのに)   「いっくん?!」  二人同時に。 (あ、やっぱり。気づいちゃった) 「やっぱ、ただのご近所さんじゃなかったんじゃないっ」 「あ、はいっ! ごめんなさいっ」  かなり食い気味で詰め寄られて、つい深々と頭を下げてしまう。  それについての様々なことを黙っていたせいで、明が樹に殴られたわけだし、言いたいこともあるだろう。 「ま、いいけど。きっと何かあるんだよね──それ、樹へのプレゼントでしょ?」  顎をしゃくって机の上を示す。 (出しっぱなしだった……。  メイさん、目敏いなぁ)   「小学校上がる前に僕の家がここに越してきて、それからずっと友だちだった。十二歳の誕生日まで一緒にお祝いしてて──でも、その後渡せなくなって。それなのに、毎年プレゼントと用意しちゃうんだ……」  さっきまでの楽しい気持ちが萎んで、部屋の中にもしんみりした雰囲気が漂ってしまう。  明は気遣わしげに僕を見ていて、大地は何故かムッとしている。 「何かあったんだ?」  何だか気持ちがいっぱいいっぱいで。  全部話してしまいたくなった。  僕は簡単に事実だけを語った。  話を聞いている明が、次第に顔色を変え、顎に手を当て考え込み始めた。  すべてを話終えると。 「ごめんっ」  土下座した。 「え……っ。メイさん?」 「金森先輩?」  僕も大地も吃驚して明を凝視した。 「それ、オレらだわ」  急に一人称が変わる。動揺してるのだろうか。 「あん時、倒れた子が動かなくなって、樹が駆け寄って助け起こした。そしたら、顔中血だらけで、オレら怖くなって逃げたんだっ」 「っだってぇ──かぁ……っなもりぃーっ!!」  床に頭を擦りつけたまま話していた明の肩を、大地がぐっと掴んで起こす。今にも殴りそうな勢いだ。

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