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第十一章 2

 それから……あとは……。  ずっと訊けなかったこと、とても知りたかったこと、然り気無く訊いてみる。 「メイさん……いっくんは……来ないの?」  声が震えてしまって、実際にはまったく然り気無さはなくなってしまっているけれど。 「あー……うん。ちょっと忙しいみたいでー……」  明には珍しく歯切れの悪い物言い。  そして、僕を見る目は何処か労るような色を帯びている。 「あ……そうなんだ」    もしかして……女の子と……。 「あ、違うよ! 女のコとかじゃないよ」  なんか……怪し……。 「え、なんか、あやしー」  僕の言いたいことは大地が言った。 「ほんと、ほんと。さーこっち、こっちー」  そそくさと歩き始めた。  なんだか誤魔化されたような気がした。 ★ ★  明は南口から大通りを学校方面に歩いて行く。  駅の北側にはファミリーレストランや食堂、居酒屋が多く、どちらかと言えば庶民的なイメージだ。  対して南側は、学校を通り過ぎてもう少し歩くと海に出る。海沿いには高級住宅が立ち並ぶ。その所為か洒落た個人店が多い。  冬の午後五時過ぎはもう真っ暗だ。  どの店もクリスマスの飾りつけをし、イルミネーションが煌びやかだ。  ドレスアップをした人々が次々と、建ち並ぶ洒落た店へと吸い込まれ行く。  学校帰りでもせいぜいコンビニくらいにしか寄らない僕らは、酷く場違いな感じがした。 「俺ら場違いじゃね?」  隣を歩く大地が半分顔を歪めながらこそっと言う。 「だね……」 「通りで金森先輩あんなにお洒落してると思ったよ。自分だけ狡い」  前を歩く明と僕らは到底同じグループとは思えない。 「大丈夫、大丈夫。そんなに気取った店じゃないから。大学生も行くような普通のカフェだよ~」  僕らの話を聞き留めて振り返る。 「俺ら大学生じゃないっすけどねー。っていうか地獄耳~~」  あははと楽しそうに笑う明。 「狡いっすよー。言ってくれれば、もっとお洒落な服…………はないけどっ!」 「二人とも可愛いから。それで大丈夫だって」 「可愛いゆーなーっっ」  しばらく歩いてT高校よりも手前で曲がる。  いつも大通りしか歩かないので、中の道がどうなっているのかまるでわからない。  どれもオーダーメイドと思われる洒落た住宅が並んでいる。一度では覚えきれないような入り組んだ道を、明は躊躇なく進んで行く。  こんなところにお店が?  そう思っていると、一軒の家の前で立ち止まる。  やはり洒落た、しかし、普通の家のように見える。  白い壁や門にはイルミネーション。  玄関ポーチまで続く石畳に沿って灯りが点り、その脇の樹木も光で溢れている。  ライトアップで家全体が浮かび上がって、尖った屋根のある二階建ての白い家だとわかる。  ポーチでは僕の背を越すクリスマスツリーが、僕らを出迎えた。  確かに普通の家にしては凝った装飾かと思われるが、今までの道沿いの家々も皆そんな感じだった。  明が慣れたようにリースのかかった扉を開けた。     

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