58 / 90

第十二章 2

 いつも通り、ひと騒ぎしたところで、 「じゃあ。行きますか」  と、ウィンク。  大地じゃないけど、最初からこっちだったら怖くなかったかも知れない。  イケメン度も増している。    そんなこともないかな。     あの得体の知れなさ。  きっと髪色落ち着いてても初対面の印象は変わらなかっただろう。  今はそれら全てが、明自身を『守るもの』ではないかとなんとなくわかる。  明が強引に入り込んで来て始まったつき合いだけど、そのお陰で明の人柄を知ることができた。  オレンジ色の髪でももう怖くない。だからもう髪色なんて関係ないんだ。  公園から神社の正面にゆっくり歩きながら。 「メイさん……あの、いっくんて……」  さっきから気になっていたことをやっと口にした。 「あー。樹、今日バイトだって」 「もうバイトしてるの?」 「あそこ、モーニングもやってるからね。元旦の朝はけっこう混んだらしいよぉ。昨日は休みだったみたいだけど、ボクのほうがダメだったから」  明はボクの顔を覗き込んで「ごめんね」と眉尻を下げる。  明が謝ることでもない。  僕はぶんぶんと頭を横に振った。  朝早いとはいえ、正月三日の神社はやはり人が多い。参拝するのにも少し並ぶ。    何をお願いしよう。  神頼みで何とかなるとは流石に思わないけど、それでも神社に来ると何かしら願いごとを考える。  今の学校生活にそれ程不満もない。  思いも寄らず、友だちも出来た。一年生で受験のことはまだ遠い。  やっぱり……いっくんのことかな。  そんなことを考えている間に自分の番がやってきた。  三人揃って並び、作法に則って礼をし、手を合わせる。  お賽銭は少し奮発。   いっくんと。  えっと。  もっと話が出来ますように。  学校以外でも会えますように。  昔みたいに、仲良くできますように…………。    ──仲良くって、子どもか。  最後は自分にツッコミを入れて目を開けると、隣はもう違う人が祈っていた。  慌てて一礼をして階段を下りる。  階段の横で二人がにやにやしながら待っていた。 「ずいぶん熱心に拝んでたなー」 「え? そう」  気持ち顔が熱くなる。  恥ずかしいことをしてしまった気がした。 「樹のことかな~~」 「えっ。ちがっちが……っっ」  図星過ぎて一人であわあわする。  更に顔に熱が。 「ふーん」  大地はやや不満げに鼻を鳴らし、明はにこにこと微笑んでいた。 「おみくじとかやる?」 「いっすねー」  僕らは境内でおみくじをやり、お守りを買った後、徒歩十分程の場所にある商業施設に移動した。  ぷらぷら店内を回り、ゲームセンターで遊び、フードコートで昼食を食べた。  友だちっていいな。  僕はすごく幸せな気分になった。  樹と離れてしまってから、こんな日が自分に来るとは思わなかった。    欲を言えば。  ここにいっくんがいたらなぁ……。

ともだちにシェアしよう!