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第十二章 3
昼食の後またのんびり歩きながら、神社に戻ってくる。
明が神社の駐輪場にバイクを置いてきたからだ。
メイさん、バイクで来たんだ。
じゃあ、大くんとは別々に……。
と思いきや、黒いぴかぴかの大きめのバイクだった。てっきり原付だと思っていたのに。
しかし、明の今日の装いを見ると今更ながら納得してしまう。
「駅まで行ける? 送って行こうか」
と心配そうな明。
時々僕を幾つだと思っているのかという扱いをする。
「ごめんな。金森先輩がどうしてもこれで行こうっていうから」
「えっ。だいくんそれ酷くない?」
二人のやり取りにくすっと笑みが零れる。
「大丈夫。駅までそんな遠くもないし。──今日誘ってくれてありがとうございました。楽しかったです」
「ななちゃ~~ん」
明が抱きついて来ようとするところを、大地が間に入って抱きついてくる。
「俺も楽しかった。七星が来てくれて良かったよ」
「だいくんだけずるいっ」
大地の後ろからそんな声が聞こえた。
「じゃあ、また新学期に」
そう言って二人はバイクに乗って走り去って行く。もちろん大地は明の後ろだ。
仲良しだな。
いいなー。
樹もああいうバイクに乗るのだろうかと、二人を見送りながら想像する。
かっこいいだろうなぁ。
それであんなふうに、後ろに乗せて貰えたら。
そこまで想像して自分がにやにやしているのに気づき、恥ずかしくなった。誰か見てやしないかと周りを見て、近くに誰もいなかったことにほっとする。
そんなことあるわけないか。
それにいっくんちにバイクが置いてあるのなんか見たことないし。
駅に向かって歩きながら、さっき二人と別れた時にふと思いついたことを、ずっと考えていた。
ターミナルの家方面行きのバス停前まで来たところで、また悩む。
このまま帰るか、それとも……。
今日もしかしたら樹に会えるかと思っていたことが、帰る今になってまた燻り始めた。
バスが来るまでもう少し。バスに乗る人の列はだいぶ伸びていて、それを眺めながら考える。
やっぱり、行こう。
僕はその列には並ばず、足早に駅に向かった。
ここは駅の北側。階段を上り、改札の前を通り過ぎ、南側に下りて行く。
それから学校に向かう大通りを歩き、途中で住宅街の中に入って行く。
それから。
……それから。
ん~?
この後、どっち行くんだっけ?
かなり入り組んだ道だった。思い出そうとしたが、ほぼ明の後ろを着いて行っていただけなので、ほんやりとしかわからない。
それに夜と昼とではまた印象も違う。
よくよく考えて見たら、店の名前もわかっていなかった。
これじゃ、スマホでも調べられない。
すぐわかるなんて、どっから来た自信なんだろ。
「ナナ?」
どちらにも動けず立ち尽くしていると、後ろから聞き覚えのある声がした。
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