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第十三章 2

 あ……二人で。そうなんだ。ほんとに仲良しなんだ。  いいな。僕もいっくんと……。 「相変わらず、騒がしいな」 「わ、いっくん」  樹のことを考えてたら本人登場で飛び上がる程吃驚してしまう。 「何、飛び上がってんだ」  くすっと笑われる。  あー。  飛び上がってたかー。  恥ずかしいのを誤魔化そうとして、 「おはよー。春休みに二人で水族館行ったんだって。仲良しだよね~。僕もいっ……」  余計なことまで口走ってしまいそうになって慌てて止める。  今のわからないよね?  いっ……しょにって感じに聞こえたらいいんだけど。 「行ってないし! 仲良しじゃない!」  大地がまた騒いでいる。 「ふーん」  樹はまったく興味なさそうな顔で相づちを打った。 「──クラスもう見た?」 「あ、まだ。大くんとメイさんは同じクラスだって」  数人の先生が配っているプリントを二人で貰いに行き、それぞれ確認をする。 「あ」  僕が小さく声を上げると 「同じクラスだな」  そういつものようにつまらなそうな感じで言う。  樹のそんな顔に前は傷ついていたけれど、今はこれが樹の普通なんだとわかる。  つまり、嫌でもないけど、嬉しいってわけでもないということだ。  樹と同じクラスになるのは、小学校二年生以来だ。  それ以降同じクラスにはならず、クラス替えがある度にがっかりしていた。  今になってその願いが叶うとは。  でも、あの頃とは違う。  嬉しいけど、少し気まずい。    大くんもメイさんもいないのに、普通に話ができるかな?  例えば、グループを組むようなことがあったりして、一緒になってくれる?  あ、そうだ。  修学旅行もあるよね。  うーん。  どうなるんだろう。  想像がつかない。  ★ ★  いろいろな妄想を繰り返し、既に一週間が経った。 「──ナ……ナナ、おいっナナ」 「え?」  はっと気がつくと、樹がトントンと机を叩いていた。僕の机の脇に立って見下ろしている。 「また、ぼーっとして。次移動教室だぞ」  そう言われて周りを見るともう教室の中は僕らだけだった。 「わっ。ごめんっ。いっくん、先に行ってて」  慌てて机の中に入ってる教科書ノートを出し、次の授業のものを探す。 「待ってる。鐘鳴るから、急いで」  ぼそっと声が降ってきた。  うれ……しい……。  顔がにやけそうになるのを必死で抑える。 「なに、にやにやして」  あ、抑えられてなかった。  いろいろ妄想して心配もしたけれど、思った程居心地は悪くなかった。  すごく話をするかといえばそんなこともない。でも無視されることもなく、普通に朝「おはよう」をして、今みたいに声もかけてもくれる。    

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