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第十三章 3

 樹と話をしたい生徒はこのクラスにもいる。女子は勿論、男子にも。  話しかけられれば答える。しかし執拗く誘おうとすれば冷たく(あしら)われる。  自然樹は孤立しているようにも見えるが、僕のそれとは意味がまったく違う。羨望の目差しで見られる孤高の存在という雰囲気だ。    小学校の時は、いつも周りに人がいたんだけどなぁ。  あの頃の樹は、今の大地のように、太陽のような子だった。  僕は相変わらず積極的にクラスメイトにも話しかけることもできず、影の薄い存在だ。そんな僕だけど、樹がクラスでは唯一自分から話しかける存在──に思われてるらしく、そこだけはちょっと注目されているみたいだ。  一部の女子には恨まれているようだけど。それはこの一年間でだいぶ慣れた。 「ナナー」  いつの間にかドアに移動していた樹が再度僕を呼ぶ。準備を整えて慌てて走り寄った。  樹の少し怒った顔を見て、 「先に行ってても良かったのに」  ぽろっと口にしてしまった。小学生の頃の二人の関係なら言いそうなことだ。  「なんだ、可愛くないな」  ぷにっと頬を摘ままれる。    ええーっ。  思いもかけない行動につい頬が緩んでしまうと「きもっ」と言って先を歩いて行ってしまった。  それでも僕のにやにやは止まらないまま、樹を追いかけた。  なんか……いいんじゃない?  こんな感じ。  だんだん昔に近づいてく。  そう思っても、いい……? ★ ★  二年になっても大地や明と一緒に食べる習慣は変わらない。  大地なんて、新しいクラスでも人気者だろうに。  明は……きっと一緒に食べたい女子がいる……はず? 「俺は陸上の強い大学に行きたい。スポーツ推薦希望!」 「わー大くんに合ってるね! きっと行けるよ」 「七星っっ」  ぎゅうっと肩を抱き寄せられる。この癖も相変わらずだ。  近く進路希望調査を出さなければならず、今日の話題はそれだった。 「じゃあボクはスポーツ医療目指そうかなっ。んで、だいくんの身体メンテする」  うふふと楽しそうに笑う明。  それに対して嫌そうな顔で大地が答える。 「かる~っ。そんなんで将来決めるなよぉ」  つんと顔を反らす。  でも、僕のほうに向いたその顔は。  なんか、嬉しそう?   「ななちゃんはどうするの?」 「僕は──」  頭の中で漠然と考えていて、まだちゃんとした形にはなっていない。  こんなこと言って笑われるかも知れないけど……。 「心理学を学んでカウンセラーになりたいな……って思ってる」 「七星! 大丈夫か。それ、大変だよ……その」  大地が言いたいことはわかる。コミュ障の自分が大それたことを考えてるって。  大地が心配してくれてるのはわかってるから、失礼なことを言っているとは思わない。

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