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第十三章 4
「うん……大くんが心配してくれてるのわかる。僕みたいなコミュ障が……難しいよね」
落ち込んでるわけでもなく、ただ自分を分析したことを言う。頭の中でどう自分の気持ちを伝えようか模索しながら。
「でも、こんな自分だから……わかることもあるかな……って。まだどういう方向に行くか、漠然としか考えてないんだけど」
気恥ずかしくなってえへへと笑ってしまう。
「俺、七星のことコミュ障だなんて思ってないよ。ただ、すごく重いものを抱えた奴だっているだろ。七星がそういうものに押し潰されないといいなと思って」
自分の言ったことが間違って伝わったように思ったのかも知れない。今度は考え考えゆっくり言葉を紡いでいるようだ。
「うん。ありがと」
素直にそう思う。
ちょっとうるっとした目をしている大地に、頭を撫でられた。
そんな僕らを明が温かい目で見ていている。
「ボクは……いいと思うよ。自分がコミュ障だと思ってもそうやって前向きになれる。そういう気持ちがあれば、これからいくらだって学べるし、やりたいこともきっと見えてくるようになる。それが今考えてることと違ってたっていいんだよぉ」
「メイさん」
明の言葉にじんときて、なんとなくしんみりした雰囲気になる。
が。
「なんだよっいいこと言っちゃって」
何故か半泣きになりながら大地が明の背中をバンバン叩き始めた。
「いたっだいくん、ひどいっ」
いつものパターンになり、ちょっとほっとした。
このままじゃ自分も泣きそうな気がして。
「樹~何にやにやしてるのー」
いててっという顔をしながら、樹のほうを見る。
僕が樹に体当たりした後からこうして時々昼休みを共にするようになった。その頃は僕らと少し離れたところに座っていた。
二年になってからは毎日一緒になり、だいたい明の隣に座るようになっていた。
「にやにやなんかしてねー」
明後日の方向を見ながらむっとしたように言う。
「あー。にやにやじゃないかー。ななちゃんのこと温かい目で見てたってわけか」
そういう明こそにやにやしている。
(え……。温かい……?)
吃驚して樹の顔を見ると、更に怒ったような顔になる。
「ちげーって」
(そうだよね。違うよね。
ちょっとがっかり)
「樹はどうするのー?」
明のその言葉にどきりとした。
樹は小学校の頃、野球選手になりたいと思っていた。そして僕も、樹ならそれを叶えるだろうと思っていた。
それを僕が駄目にしてしまったんだ。
樹は今はどんな夢を描いているんだろう。
僕はそれが気になっていた。
自分から樹に話を振れず、明がそう言ってくれたことがありがたかった。
それから、少しの不安も。
もし、今の樹な、何もなかったとしたら。
「あー、大学に行く」
「うん、それで!」
「…………」
「それで!」
新たな質問には答えずにいると明に急かされる。
「先生」
いかにも仕方なしにという感じで、ぼそっと声が聞こえた。
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