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第十六章 1

 ** 第十六章 ** 『七星~七月三十一日、空けておいてよー』 『あ、ななちゃんの誕生日だね。もちろんだよぉ』 『カナ先輩には聞いてない』 『だいくん、ひどいっ』  僕はスマホの画面を見て、くすっと笑い、笑っている猫のスタンプと、ありがとうのスタンプを続けて送った。 『また、お祝いしてくれるんだね。メイさんも。嬉しいです』 『ななちゃ~ん♡』 『七星の家に行っていい?』 『うん』    夏休みに入った初日。  グループラインにメッセージが入ってきた。  僕、大地、明。そして、樹のグループ。  夏休み前に突如として提案してきたのは、やっぱり明。  それぞれ個人的には繋がっていたけど、四人で遊ぶ時にやりとりが大変だからと。  来年は遊べないから今年はたくさん遊んでおこう! と言っていた。  僕には特に異論はなかったけど、樹は入らないだろうと思っていた。  でも、驚いていたことに樹も承知した。  嫌そうな顔はしていたけれど。  渋々ではあったけれど。  そうは言っても率先して何か言ってくることはなく、そして大概返信も遅い。 『樹はー? もちろん行くよね~?』   明が樹に話を振るが、返信はなし。既読もなし。  たぶん、バイト中なんだろう。  夏休みはけっこうみっちり入っていると言っていた。 『あ、そうだ!』 『樹の誕生日もついでに祝ってあげるよ』 『メイさん、ついでは、ひどいですよ。ちゃんといっくんもお祝いしてください』 『ななちゃん。やさし~』 『あ、でも。僕なんかと一緒じゃあ……』 『七星がメインだからな』  何故か怒りスタンプを送ってくる大地。   (これ、あとで、いっくん見るよね?)  怒らないかな~。 『じゃあ、三十一日のお昼くらいに七星の家に集合!』 『は~い♡』 『待ってるね』  一旦そこでメッセージは止まった。  夜八時過ぎ。  ピコンとスマホが鳴った。ラインの通知だ。  ひょっとして樹から、そう思って急いで(ひら)く。 『行く』 『でも、俺のはいいから』  やっとバイトが終わって家に帰って来たのだろうか。それともこれから帰るところかな、などと想像する。 (わ。いっくん、来てくれるんだ。  嬉しい♡)  そう返信したいけど、たぶん気持ち悪く思われるので、心の中で思うだけに(とど)める 『いっくん、バイトお疲れ様』 『おー』 『おやすみ』 『おやすみ』  樹らしい簡単なメッセージ。  彼の無愛想な顔が浮かんで、自然と笑みが浮かんでくる。  二人だけの世界。のように見えるけど、あとで他の二人も見て、嵐のような返信が来るに違いない。 ★ ★ 「今日、来てくれてありがとう」 「長居しちゃってごめん。また連絡するなー」 「今度はどっか遊び行こうね」  午後六時。  夏のこの時間はまだ明るい。  僕は手を振って坂を降りて行く二人を、フェンス越しに見送った。  今日、樹は来れなかった。  二日前。 『悪い、ナナの誕生日行けなくなった』  というメッセージが届いた。

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