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第十六章 2

『急に団体の予約入って、バイト出ることになった』 『え~』  明からはブーイング。 『それは仕方よな! 大丈夫! 城河いなくても、俺がちゃんと七星を祝うから』  何処か樹は来なくていい的なニュアンスのあるメッセージは、大地から。 『僕のことは気にしなくていいよ。バイト頑張って』  僕はそう返信した。  勿論本心はかなりがっかりしてしまったのだが。  午後九時を回った。  開けたままの窓からやっと少しだけ涼しい風が入るようになった。  僕はベッドに寝転んでスマホを睨んでいた。 (いっくんから連絡来ないかぁ……)  ひょっとしたら、樹からお祝いのメッセージが来るかも知れない、などと少しだけ期待をしていた。    (バイト、まだ終わってないかもしれないし。  それに、忙しくて疲れてるよね。  お祝いどころじゃないよ。  バカだなぁ、僕)  ははっと乾いた笑いが漏れてしまう。  その時。  ピコンとスマホが鳴った。  急いで開く。 『ナナ、起きてる?』  樹だ。  起きてなかったらどうするんだろう。  ふふっとさっきとはまったく違う笑みが零れる。 『起きてるよ。いっくん帰って来たの?』 『ああ』 『お疲れ様』 『ああ』  何か話があるのかと待っていたが、返信は来ない。  少し寂しい気持ちを感じながらも『おやすみ』のスタンプを送ると、すぐに『待って』という返信が飛んできた。 『こんな時間に悪いんだけど、ちょっと出て来れないか?』 「ええーっ」  これには吃驚して一人なのに、声をあげてしまった。 (なんだろう、いっくん。  出て来れないか、なんて) 『大丈夫! すぐ行く』  どきどきしながら返信して、すぐに部屋を出た。 「あれ? どうしたのー?」  一階では母と姉がテレビを見ながら、ケーキの残りを食べていた。  明と大地が帰った後は、家族にも誕生日を祝って貰ったのだ。  突然バタバタ降りてきて玄関の方へ小走りに向かって行くのを見て、二人は驚いた様子だった。 「ちょっとだけ外に行ってくる。家の前だから」 「どしたー? ひょっとして彼女でも来たか~?」   と姉。 「違うよ、いっくんだよ。彼女なんているわけないじゃん」  自分の答えに情けなくもなったが、そう言えば彼女欲しいなんて思ったことなかったと改めて気づく。  母はこちらを見てにこにこしている。  たぶん、樹との交流がまた始まったことに喜んでいるのだろう。  外に出ると、樹が玄関前に立っていた。 「いっくん」 「ナナ、こんな時間に呼び出してごめん。それから、今日来れなくて……」  

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