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第十七章 1
** 十七章 **
電車の心地好い振動。
それから、なんだかすごく温かなものに包まれているような感覚。
遠くで話し声が聞こえるような……。
「七星寝ちゃってる~」
「可愛い寝顔」
「しー。昨日あんまり寝れなくて、疲れてるんだろ。着くまで寝かせておけ」
「樹、やさしー」
「誰のせいだと思ってるんだ」
「え? 誰って」
「ごめん」
大地が謝っている声で浮上。
(わ、いっくんに寄りかかって寝ちゃってたんだ)
羽田空港から電車に乗って途中で乗り換えた時、二人ずつなら座れる席が空いていた。僕と樹、明と大地にわかれて座った。
僕と樹は横並びに座り……途中から記憶がなくなった。
どうやら前の席が空いて、大地と明が移動してきたらしい。
(なんか、気まずい。
目、開けられない)
そうなのだ。
大地、それから明のせいで、僕は余り良く眠れてなかったんだ。
★ ★
この辺りの公立高校の修学旅行は大抵沖縄で、僕らの通うT高校もやはりそうだ。
十一月半ば。
三泊四日で沖縄へ。
平和記念日公園へ行き平和学習をし、民泊をしつつ民家家業の体験をした。三日目は班別自由行動で水族館、マリンスポーツなどを楽しむプランだった。
中学の頃、自由に班を組むのは苦手だった。
大概あとから足りない場所に仕方なしに入れて貰い、すごく気まずい気持ちになっていた。
高校に入ってもそんな風になるだろうと思っていたが、一年の頃は大地に引っ張られ簡単にグループが完成していた。大地といることで気まずさもなかった。
二年はどうだろう。
意外なことに、学校行事に積極的ではなさそうな樹が、ささっと名指ししていた。その中に常に僕を入れてくれるのが嬉しい。
新学期になって同じクラスになった時は、最悪避けられるかもとも思っていたのに。
修学旅行は特に四日間を共にしなくてはならない。
樹が僕以外に選んだメンバーは、自分に興味なさそうな男子だったのが、彼らしいと言えば彼らしい。
樹と同じ班になるのは嬉しい。嬉しいが、何年振りかに一緒の部屋に寝泊まりすることに、何故か酷くどきどきしていた。
初日のホテルは三人部屋、二日目は広い部屋に二グループ混ざって寝ていた。だから、余り意識せずにすんだ。
しかし、三日目は樹と僕の二人になってしまった。
(男同士なのに、こんなにどきどきしちゃって。
ほんと、可笑しい。
ううん、きっと久しぶりだから。
誰かと泊まるなんて。
きっと、そう)
そんなふうに自分に言い聞かせていたのに。
大地のお陰で、全部ぶち壊された。
今のこの状況をどう考えたらいいんだろう。
想像を絶する展開になってしまった。
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