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第十七章 3

「アイツが心配するはずねぇー。っつか心配してたのは俺のほうだっつーのっ」  僕の腰に手を回しぎゅっと抱きしめながら、頭をぐりぐりとお腹の辺りに押しつけてくる。 「あーアイツって、メイさんのことかー」  と今更ながら納得したが、樹の顔を見ると『最初からわかってました』という表情だった。 「こいつがこうなるの、カナ以外にいないだろー」 「え? どうして? どうしてそう思うの?」 「それは……まぁ、いいや」  何故か二人のことになるといつもこうやって途中でうやむやにされている気がする。  問いただしてみたいけど、今は大地を宥めなければならない。   「ったく何処に抱きついてるだ」   隣からちっと舌打ちが聞こえた。 「え? なに?」 「なんでもねぇ」  なんでもなくなさそうな顔をしているが。 (とりあえず、こっちが先) 「大く~ん。メイさんと何かあったの?」  腹の辺りにある頭を撫でながら訊ねてみる。 「夕飯の後、ちょっと用事って言って出てったきり、消灯時間になっても戻って来ないし、連絡もないし。心配してたのに」   ぐすぐすっと涙混じりに話す。 「うん」 「こっちから連絡しても返信ないし」 「うん」 「さっき戻って来て、どうしたの? って聞いたら」 「うん」  言いにくいのか、言いたくないのか、ここで少し溜めてから。 『女子に呼び出されて庭で話してたら、せんせーに見つかっちゃって、いつの間にか消灯過ぎてたんだね~てへっ』  明の口真似をした。  似てる! って言いそうになってぐっと堪えた。 「それで怒られてて遅くなったって! なんで、女子となんかいるんだよ~。俺めっちゃ心配したのに~へらへらしやがって~っっ」 「そうだったんだね、それは心配するよね。怒りたくなるよね」  そう共感の意を示しながら。 (どの辺りに、そんなに腹を立ててるんだろ?)  そんな疑問が浮かぶ。    女子といたこと? 先生に怒られたこと? 心配してたのに、へらへらしてるから?  そんなことを考えていたら。 「そんなの二人で解決しろよ」  樹の不機嫌そうな声が聞こえた。 「ちょっと、いっくん」 (それは確かにそうだけど。  そういう言い方はないよ。  こんなに泣いているのに) 「ねぇ、大くん。部屋に戻ってメイさんと話……」  樹と同様の意味だけど、それを優しく言おうとして。 「あれ? 大くん寝てる」 「え」  樹が立ち上がってこっちのベッドを覗き込む。 「なんだ、こいつ。言うだけ、言ってーーおい」  大地の肩を揺すろうとする。 「あ、待って待って」  大地を起こさないよう小さな声で止めた。 「なに?」 「寝かしておいてあげよ?」

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