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第二十章 4

「ななちゃん、大地のこと許してやって」  気がつく大地の目からはぼろぼろ涙が零れていて、やっと僕は冷静になった。 「あんたが言うなよ」  ぐしゅぐしゅっと鼻を啜る。  大地の頭を撫でている明の顔は労るように少し和らいでいる。 「……大くん、ごめん」  謝ると、大地が首をぶんぶんと横に振った。 「……樹が言いなりって……何か交換条件でも……」  小さく呟いて一人首を捻る明。 「メイさん」 「えっと……」  明は僕の顔をじっと見ながらゆっくりと話す。  頭の中でいろいろと考えているようだ。 「ななちゃんも知ってるかもしれないけど、あの集団にはいろいろ悪い噂があって、それは事実だと思う。学校内外での喫煙とかリンチとか、万引きカツアゲ、クスリなんか。でも信じて欲しい──樹はそういうことは絶対しない」  僕は黙って頷いた。 「それから……『龍惺さんのオンナ』のことは、どうやら『樹の彼女』にも関係してる……たぶん、『樹の彼女』が……」  それは僕が樹に訊きたくて訊けなかったこと。      でも……。  僕はいったい何で訊きたかったんだろう。  どんな答えを貰って、安心したかったんだろう。  明の考えている通りだったとして、それが切っ掛けで二人がつき合い始めたというのなら。訊いたところで、それがはっきりするだけで、傷は深くなるばかりなのに。 「龍惺さんがこの件に本当に関わっているのかは謎だけど」 「そうなのか?」  やっと大地の涙は止まったようだ。 「ああ。龍惺さんをリスペクトしてる奴らが勝手にやって、末端に指示がいってる可能性が高いかも。でも、そのほうがやっかいかな──BITTER SWEETの外にいた連中もたぶん、それだよ」  ぽんっと肩を叩かれた。 「はい」 「樹の言う通り、BITTER SWEETにはしばらく行かないほうがいい。それから……樹のこともしばらく静観して」 「え……でも……」  確かに今は近づくことも出来ないけど、このまま、、離れたくはない……。 「危険だから」 「俺もそう思うよ」  大地も明に同意して大きく頷いた。 「何かあったらオレに言って。それなりに守ることはできるから」 『何かあったら俺に言って』  樹から言われたことと同じ言葉を明が言う。  樹の言葉が無効になってしまったような気がした。  せっかくの大地の誕生日祝いだったのに、こんな話になってしまい、しかも当人を泣かせてしまった。  それぞれ胸の内にはいろいろあると思うけ」ど、仕切り直してもう一度『おめでとう』から始めた。    

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