115 / 156

第二十二章 1

 ** 第二十二章 **  『もう二度と俺に近づくな』  そう言われてから、樹と間近で顔を合わせていない。  遠くに見掛けて。  ああ、今日は学校に来てるな。  とか。  最近見かけないな。  とか。  心の中で。  おはよう。  元気?  今日も怪我してる。ケンカばかりしちゃだめだよ。  なんてふうに話しかけてる。  でも。  諦めたわけじゃないんだ。  今の僕は小学生、中学生の頃の僕とは違う。  高校で再会して、昔に戻りつつ合った時に思ったんだ。  あの時諦めなければって。  そうしたら、違う未来があったかも知れないのに。ずいぶん遠回りしてしまったと。  だから、諦めない。  僕の真実(ほんとう)の想いは叶わなくても、また友だちとして。  そう。一番の友だちとして隣を歩きたいんだ。 ★ ★ 「お誕生日おめでとう! 七星」 「おめでとう、ななちゃん。十八には見えないけど」   ボスっと明の腹にエルボー。  「いたっ。だいくんひどいっ」  相変わらずの二人だった。 「可愛いってことだよ?」 「そんな、可愛いだなんて……僕男だし」 「まぁ……可愛いはわかるけど」  大地も同意。 (え~。  ほんと、もう。  いい加減可愛いからは卒業したい) 「ここでお祝いするの、三度目だね──月日が経つのはほんと早い」 「なんか、おっさんだな」 「おっさん言うな!」  今日は僕の十八回目の誕生日だ。  皆受験生の夏ということで、去年みたいに遊びにも行けないけど、明も大地も今日はこうして集まってくれている。  いつも通り、細やかで楽しい時間だ。 「今年も……樹、一緒に祝えなかったね……」  明がぼそっと漏らすと、大地が「しっ」と口の前に指を立てた。   僕に気を使ってくれたのだろう。 (去年はいっくんの誕生日と一緒にお祝いする予定だったけど、バイトで来れなくなったんだっけ。  でもバイトの後来てくれて、二人でプレゼントの交換をしたんだ……)  そう思い返して、ぽっと心が温かくなる。 「大くん。大丈夫だよ……僕もいっくんに連絡いれたし」 「え? そうなんだ?」  大地はちょっとびっくりしたようだ。  もう全く関わり合っていないと思ったのかも知れない。 「うん。僕、時々いっくんにラインしてる。返事は来ないけど……でも、既読にはなってる。ブロックはされてないんだよぉ」  僕は笑顔で言った。 「七星~」 「ななちゃん」  二人が僕にぎゅっと抱きついてきた。 「七星、いいんだよ。あんな奴ほっといて」 「ななちゃん、ありがとー。樹を見捨てないでくれて。ほんと、いいこ」  二人は全く別のことを言う。  でも僕を思ってくれている気持ちは伝わってくる。 「僕……諦めないって決めたんだ。前に一度諦めて、後悔したから」  

ともだちにシェアしよう!