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58 過去への嫉妬

 理玖は俺と出会う前のことはあまり話したがらなかった。  そもそも俺との最初の出会いは所謂「出会い系サイト」だったわけだし、俺と同様「運命」を探すためにきっとたくさんの出会いを経験しているのだろう。   「理玖……抱いていい?」 「え、いいよもちろん」  わざわざ聞くなと恥ずかしそうに目を逸らす理玖が可愛くてしょうがない。最初の頃は驚くくらい俺に対して辛辣な態度で、穏やかで可愛い今の理玖とは想像もつかない。番の契約を交わしたからか、理玖からの愛情は不思議と言葉がなくてもしっかりと伝わっている。逆もまた同じだろう。自分だけの運命の番を探していたあの日々を思い返すと、信じられないくらいに充実した気分だった。小さく空いていた心の隙間がいつの間にか埋まっていて、そこからふわふわとあたたかくなっていく感じ── 「幸せすぎる」  俺は理玖をベッドに横たわらせると堪らなくなりぎゅっと強く抱きしめる。緩めのTシャツに下着だけの悩ましい姿の理玖が「苦しいって」と笑いながら体を起こすと、そのまま頭を引き寄せられあっという間に唇を奪われた。熱い理玖の舌が容赦なく俺の口内を舐っていく。頭を押さえられているせいで逃れることができない。理玖の舌先が俺の上顎を軽く撫で、少し強引に舌を吸われる度に快感が走り胸が昂る。初めて体を交わした時には気がつかなかった理玖の行為。自分より遥かに手慣れたそれはやっぱりちょっと複雑で、嫉妬心が湧き上がる。  いつの間にか押し倒されていた俺は、俺の腰にまたがり見下ろしてくる理玖の腕を掴む。妖艶な表情で俺を見つめる理玖はゆっくりと覆いかぶさり、耳を食んだ。 「なぁに? そんな強く掴んだら痛いって」  別に強く腕を掴んだわけじゃないのに、揶揄うように理玖はそう言うと俺の手をやんわりと解く。逆に俺が理玖に捕まってしまい、身動きが取れなくなった。最初の照れ臭そうな表情とは一変して、こうなった理玖はどんどん積極的に俺を攻め立てる。俺の嫉妬心からくる独占欲を満たしたいために理玖を甘やかし抱きたいのに、気がつけばこうやって俺は理玖に溶かされてしまう。 「こんなにしちゃって……翔はエッチだね」  理玖は器用に俺の下着を剥ぐと、すぐにそこへ腰を擦り付け俺を誘う。「挿れちゃうね……」と有無を言わさず自身の後孔へあてがうとゆっくりと腰を沈めた。  悩ましく俺の上で腰を振う理玖に俺はされるがまま快感に溺れていく。時折「好き」「もっと愛して」と懇願するように小さく囁き強請ってくる理玖に優しくキスをし、俺は蕩けて消えてしまいそうな理性を保った。

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