翔の手が、指が、俺の体を溶かしていく── 　少し触れただけなのに、全身にピリリと電流が伝わっていくように快感が駆け巡る。翔と番ってからは発情のしんどさはかなり緩和された。それでも発情期の近い今日はいつも以上に翔の色香にあてられてしまう。 　俺だけの翔。俺にしか発せられない情欲が体の奥にまで突き刺さるように熱を帯びていく。乱暴にも思える翔の熱が俺の独占欲を満たしていった。 「あっ、翔……気持ちいい。あん……待ってやだ、しつこい……」 　翔の熱い滾りを感じたい俺の意をちゃんとわかっていて、焦らすように翔は俺に触れてくる。「早く挿れて」と思わず出てしまった言葉に、今日は主導権を握りたいのか翔は嬉しそうに首を振った。 「翔、やだ、だめ、それはいいから。んっ、あっ、だめ……ひゃっ……」 「気持ちいだろ？　うん、いいよ、もっと気持ちいい声、俺に聞かせて」 　俺のを緩々と扱いていた翔の手が後ろにまわり、翔を受け入れるべく潤ってきた後孔の縁を意地悪く弄られる。もどかしさに堪らなくなりながら「お願い……」と懇願すれば「よく言えました」と言わんばかりに俺の頭をくしゃくしゃに撫で回し抱きしめてくれた。何度も「好き」と囁いてくれる翔の唇が俺のそれと重なり、愛おしそうに口内を舐っていく。翔にしがみつく俺ははしたなく足を広げ腰を揺らして強請ることしかできない。早く欲しくて強請る俺を宥めるように、いつまでも翔の舌が俺の中で蠢き、挿入されたままの翔の指もまた執拗に俺のいいところを攻め立てた。 「……もう我慢できない、お願い、翔の……早く挿れて……」 「どうしようかな、もっと理玖の蕩けてる顔見てたいんだけど」 「やだ、翔、早くちょうだい──」 　意地悪しないでと、少しあざとく言ってみるとますます翔は嬉しそうに俺の奥を弄り倒す。焦らしに焦らされ、いい加減おかしくなりそうな俺のだらけきった顔を見て「俺は幸せだ」と目尻を下げた翔が呟いた。 「一緒に住めば、いつでもこうやって理玖に触れられる」 「……あん、んっ、ねえ、早く……」 「理玖は俺の……俺だけの」 「ひっ！　あっ！　んあぁ……あっ……あぁ」 「え？　理玖、もうイッたの？　なんだよ可愛いな」 　散々焦らされ脱力していたところに翔の滾りを一気に挿入された俺は、その刺激だけで盛大に果ててしまった。されるがままの俺にお構いなしに翔は更に律動を強くする。「待って、もうイってるから」と力無くしがみつくことしかできない俺は、翔の思うままただただ情けなく喘ぐしかなかった。何度も体勢を変えられ、抱えられるように翔に優しく拘束される。奥の奥まで貫いてくる翔の滾りがどんどん良いところを刺激して、まさに快感の中に溶かされていくようだった。混ざり合った互いの熱にうかされながら、翔も俺で満たされていくのがわかる。これ以上ないくらいの多幸感に溺れてしまいそうで怖くなった。 　二人してドロドロに蕩けるまで愛し合う。もう翔は俺の一部だ。そんな翔と一緒なら溺れるのも怖くないな、と微睡みの中「幸せだよ。理玖、愛してる」と言う声を聞いて安心していた。