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第5話
「ひぃちゃーん!ごめん!俺…大事にしたかったのに加減できなかったぁ…ごめんねぇ。あ!泣いてる…俺のせいだよねぇ…ごめん!だけどごめん!泣いても離してやんないから!逃げようとしたら閉じ込めちゃうから」
今さらっと不穏なこと言ったよね?だけどそれには気づかないふりをする
「俺やりすぎちゃったから嫌われるかもって…だけどもう人にやりたくないから」
「…嫌わない。だって俺がお願いしたんだもん…今ね…すごく幸せ」
そう言って俺の方からキスするとまたもう一戦始めようとするからそれは流石に止めた
「…ねぇ。体だけ…なの?」
自分でも気持ち悪いくらい猫撫で声で態とらしく上目遣いして見つめると顔を真っ赤にして俺のぺたんこな胸に顔を埋める兄ちゃんのさらさらの髪を撫でた
「可愛いよぉ…ひぃちゃん…大好き…愛してるよぉ…身体だけなわけ無いでしょ…ひぃちゃんが愛しくて愛しくてたまらないんだ」
「ふふ…ありがと…だけどさ兄ちゃん」
「ん?」
「仕事…忙しくなると…なかなか会えなくなるね…寂しいな…兄ちゃんはこれから多くの人に出会ってそんで素敵な人に出会って…恋をして…俺のことなんか忘れちゃうのかな…」
これからにいちゃんのグループはますます人気が出てくるだろう。今でさえなかなか休めないのだからきっともっと…そう思ってたら自然と口から出てた。余計なこと言ったかなってちらりとにいちゃんを見ると…
「…じゃあさ!アイドルになればいいじゃん!!」
「はぁ!?」
何だかとんでもないことが聞こえた気がする…きっと気の所為…
「ほら!これ!契約書ね!ひぃちゃんだけの特別仕様だよ!」
そういって一枚の紙を見せられた
さらーっと読むとまぁそんな感じだよね?って思ったことが書いてあって…だけど最後の一文に目を見開くことになる
「何これ!公式で俺とにいちゃんの仲が認められてることになってる!!」
「へへっ!ひいちゃんが少し眠ってる間にね急いで会社と話したの!そしてこれ持ってきてもらった!これでずっと一緒だね!」
「勝手に決めないでよ!!俺の意志は!?」
「は?ひぃちゃんは俺のだから!」
「やだ!俺が目立つの嫌いって知ってるでしょ?それに、この容姿じゃだめでしょ?親は?親にも話さないで勝手に決められな…」
「それなら許可済みだよ!乗り気だよすっごく!だし俺と同じグループだから安心!って。最初デビューしたときメンバーが他にもいてその人は遅れて合流するっていう話も出てたでしょ?」
そういえばそんなこと言ってたな。少しずつ増えていくんだなぁって人ごとのように聞いてた。
「それがまさか自分なんて思わないでしょ!?」
「えぇ!!でももう決まってるし!そもそも俺がアイドルになるのそれが条件だったし!だから来てくんないとやめないとなんない」
「じゃあ辞めろよ!」
「わかった!なら連絡するねぇ。待ってねぇ」
って本当にスマホを操作し始めるから焦る
「もしもし。お疲れ様です。俺辞めます。大切な人が隣りにいないなら意味ないから。勝手ですいません。じゃあ」
「ちょちょちょ!!まって兄ちゃん」
あまりにも潔すぎて止めるのが遅れてしまった。無理やりそれを奪い話す
「もしもし!初めまして!すいません!!俺この人と離れますから今のナシに…は?えっ!?ちょっと!!」
相手の人はケラケラ笑いながら電話を切った
「結構自由度高いからね。俺の代わりなんていくらでも居るし。ひぃちゃんが嫌がることはしたくない!そもそも俺が入った理由は春雪にひぃちゃん取られたくなかったからだし。だけどひぃちゃんが春雪でなくて俺を選んでくれたからもういいからねぇ」
「お前はばかか!?」
「えっ!?」
「あのさ。たしかに寂しいよ。だけどあんたを待ってる人が大勢いるでしょ?今日も学校であんたの噂してた。みんな楽しみなんだってワクワクしてた。地元が同じのあんたが人気が出るたびこの街の人も喜んだ。それを、俺一人の言葉一つで踏みにじるのか!?」
「だって!ひぃちゃん隣りにいなきゃ頑張れない!」
「俺のせいにするな!」
「だけどひぃちゃんきてくんなきゃ俺もう頑張れないよ…だって…好きだから…離れたくない…離れたら頑張れない…だから…」
「一緒に…いけばいいの?そもそも俺こんなに地味で平凡なのにあんたたちのキラキラしたグループにいれるわけないでしょ?」
「…無自覚天然…」
「は?」
「あのさ!ひぃちゃん気づいてない?自分の魅力」
「意味わかんない」
「地味なのはわざとでしょ?だけどねひぃちゃん。小さい頃から知ってる人はわかってるよ。ひぃちゃんが俺なんかよりずっとすごいってこと」
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