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第11話
月曜日、火曜日。
時間は流れ過ぎていく。止まることも、戻ることもなく、進んでいくばかりだ。1日は24時間あるのに、ミサキと一緒にいるのは、その1/3くらいしかない。僕達は飽くことなく抱き合い続けた。
以前にも増して言葉を交わさなくなった。暗闇の中、手のひらや腕に感じる熱だけでよかった。お互いに相手を欲しいと思うことが、その熱が二人の存在を証明していたから。
いや違う。ただ怖かった。口を開いたら、どうしようもないことを言ってしまいそうで、僕達は肌を重ね続ける。
哲平から連絡はこなかった。仕事から帰って、僕のそっけない一行の手紙をみて何を思っただろうか。電話もメールもしてこない、その哲平の優しさに心が痛んだ。
誰かを傷つけても尚、突き進む。こんなことはこれからの僕にあるのだろうか?いや、なくていい。僕には耐えられないだろう。自分で思っていたよりずっと僕は弱い男だと、ミサキに会って初めてわかった。
給料日と週末を控えた木曜日が重なり「Satie」はとんでもない忙しさだった。早く上がれればいいと思っていた希望は砕かれた。お客さんは途切れることなくやってきて、満足して笑顔で帰ってもらうには最大の努力をしているうちに時間が過ぎていく。
謝り、お礼をいい、おすすめをして、できる限りの笑顔をお客様に向ける。重さんの慌ただしい指示にてんてこ舞いだった。あげく馴染みのお客さんが長居をしたから、店をあがったのはもう0:00を回っていた。
走れば終電に間に合うタイミングだったけれど、僕はタクシーに乗ってミサキの家に向かう。タクシーでミサキの家に行くのははじめて会った日以来だ。
今はミサキが隣にいない。
それは僕達の時間が終わってしまっているからだろう。すでに日付が変わりミサキの帰る「金曜日」になってしまった。
短かった4週間弱が終わろうとしている。
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