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第2話
帰宅したら、やはり藍はいつもどおりリビングのソファにいた。
アイランドキッチンのカウンターには、簡単な料理が並べられていて、御丁寧に小皿までその隣に置いてある。
「あ、お帰りー」
「あ、ああ……」
職安へって、どう切り出そうか。
柾は帰宅早々いつものように風呂場に行き、シャワーを浴びながら考える。
いやこれは、妙に回りくどい言い方をせずに、丁寧にまっすぐ伝えた方がいい。
そう腹を決めて、いつもどおり部屋着に着替えた。
カウンターからリビングのテーブルに夕食を運ぼうとしていた藍を引きとめる。
疑問を顔に浮かべている藍をリビングのソファに座らせて、柾もその隣に座った。
「藍、最近毎日食事を作ってくれているのは、すごく、感謝しているんだ」
回りくどい言い方をしないと決めたのに、いざ口を開けば、どのように伝えていいのか分からなくなる。
そんな柾の台詞に、藍は何が言いたいのかと言うように続きを待っている。
「それで、藍、これからは家事をするだけじゃなくて、今後生きていくためには、仕事も必要で――」
「ちょっと柾、僕のこと無職だと思ってる?」
言い終わる前に思わぬカウンター攻撃を受けて、柾は瞼を数回瞬いた。
その仕草で藍には十分伝わったらしく、藍は両肩を小さく落として、ソファから立ち上がると、自身の荷物が置いてある寝室に向かう。
もどってきた彼の手には、なにやら白く小さな紙があった。
はい、と渡され、柾はその小さな紙をまじまじと見つめた。
名刺だった。横書きで、高藤藍とそのローマ字表記が下に記載され、さらにその下には、英語でオフィスのアドレスと、電話番号が書かれていた。
「これが、藍の働いている、会社?」
「そう。向こうでの生活ではあんまり使わないけど、日本では必要ってことで、戻ってきたときに作ったんだ」
なるほど。それで会社の住所が日本のそれになっているし、電話番号も日本の固定電話の番号だ。
藍はソファに座ると、柾が持つ名刺をいったん取り上げ、その裏面にさらさらとペンで何ごとかを記載している。
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