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 頭がよろしくない十九歳児向けに語られるシステムの概要は、こうだ。  今回のようにトラブルにより天国行きの善人同士の両方が死ねば、特殊なルールが適応されるらしい。  魂の善悪の判断を担当している声たちは、善の魂を地獄へ送りたくないのだ。  しかし簡単に許してしまえば、運命を曲げられた善人が浮かばれないだろう。  善人は善人なので怨恨を持ったりしないが、それでも夢半ばであったり家族を遺してしまった者は大なり小なり不遇を感じる。  善悪を持った生き物の宿命だ。  その不満のバランス(・・・・)は、取らなければならない。  それが通称〝罰ゲームシステム〟。  ちなみに響きが良いから付けただけで、お遊びではないそうだ。内容はいたって真面目なシステムである。  まず、うっかり殺された善人は可能な限り一つ望みを叶えてもらった上で、自分を殺した善人にペナルティ──試練を与えることができる。  そして殺した善人は残りの寿命を消費しながら、与えられた試練を全うする。もちろん再びの自殺は禁止だ。  一度死んだ人間は元の世界で生き返れないため別の世界へ飛ばされ、与えられた試練を一生かけてクリアする。 『ちゃーんとわかったか?』 「あぁ」  足りない知識を質問しながら真剣に自分のやるべきことを咀嚼した一斉は、しっかりと頷いた。  声は一斉の成長に涙ぐんで喜ぶ。  実は挙手をしまくり、あれこれ質問ばかりしたのだ。おかげで五歳児程度に扱われている気がするが文句は言えまい。大雑把に生きてきたツケである。 『さてそれでは……立仲 昭三がオマエに望む、ペナルティを与えよう』  ──そしてこれは、死に際のツケ。  とっくに覚悟を決めている。  地獄のようなペナルティでも、つぐないになるのなら拒否はしない。  一斉がにべもなく頷くと、声は薄く笑い、ペンペケペッペッペーン! とマヌケなファンファーレを鳴らす。 『佐転 一斉。オマエには別の世界で喫茶店のマスターとして客と交流し、その世界で──喫茶店文化を発展させてほしいのだっ!』 「きっさてんってなんだ」 『…………』  一斉は喫茶店を知らなかった。

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