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『えーワイは一斉はんのペナルティの手助け、主にボーナス能力を管理してますぅ』
「ドリンクバー」
『そ!』
ウィン、と元気よく球体ボディを頷かせるツーミン。
曰く、ツーミンはドリンクバーの使い方やレベルアップ通知などあらゆる質問に答えて一斉を補佐する一斉専用ヘルプ係らしい。
基本的にツーミンの声は一斉にしか聞こえず、数々のサポート能力(詳細は秘密だそうだ)も一斉のためにしか使えない。
この世界にもカラクリはある。
自我のある無機物とバレなければツーミンはただの奇妙なカラクリに過ぎず、不審がられることもないだろう。
一斉が許可した相手にだけツーミンの声が聞こえるようにすることもできるが、それは間違って捨てられたり他人に奪われたりとトラブル発生時の緊急用。
ツーミンはあくまで、一斉の罪滅ぼしがスムーズに進むようサポートするだけのお目付け役だ。
普段は一斉の精神の中に潜り込んでいるので呼べば出るし、脳内で話し相手になることも一斉の見聞きしたものは共有することもできるが、世界への関わりは最小限である。
一斉が能力を使っていない間はスリープモードに入り、リアルタイム情報も薄らぼんやりしか把握できない。
常に伝わるのは一斉のヘルスデータくらいなのだとか。
頼りになるが頼りにはするなよ、という神々の意志を感じた。
あくまで自律する手足の一部。
一斉とツーミンは一心同体なのだ。
『勝手に出てくることはあんまりないんよー? こっちにもルールがあるんやし……でも一斉はんがなかなか能力使わへんからワイのご挨拶するタイミングがなかったんや! もっといっぱい構ってぇや! こう見えて寂しがり屋やで! 甘えんぼさんやの!』
「悪い」
なかなか能力を使わなかったことを根に持っているらしくプリプリと腕を振って怒るツーミンに、一斉は素直に謝りつつ黄色のツルツルボディをちょいちょいとなでた。
ジェゾになでられて嬉しかったことを思い出したのだ。コロコロでかわいい。
『あわぁ〜ん』
気持ちよさそうに転がるツーミン。
カニやら蜘蛛やらに似た動きをするツーミンだが、なでられると喜ぶ。
今後のために覚えておこう。
そうしてツーミンをしばらくなでたあと、一斉はツーミンの指導のもと、ドリンクバーチャレンジを行うことにした。
『まずは〝自分を知りたい〟と頭ん中で願ってみい! 一斉はんでも自分の状態が把握できるよう、ステータスが見れるはずや』
「自分……」
言われた通りに願ってみる。
すると目の前に白い空間で見たような、薄い映像が現れた。
[佐転 一斉 ]
[Lv]1
[役職 ]野良召喚獣
[特技 ]ドリンクバー
[祝福 ]自動翻訳/記憶再生・立仲昭三/グウゼンの加護/ツーミンのマスター
グウゼンの言うとおり、この世界は本当にゲームのようなシステムが実現できる仕組みの世界らしい。
能力パラメーターはないものの、レベル表記があるだけでそれっぽい。
あれば知力あたりは壊滅的だろうが、パワーとスタミナには自信がある。攻撃特化の耐久全振り脳筋モンスターだ。魔力的なものもあるかもしれない。
しかしレベルが1はちょっと。
戦闘能力という意味か? もし人間としてのレベルなら切な過ぎる。
一斉は筋トレと格闘訓練を普段より多めにしよう、と密かに修行の決意を決めた。勉強? はてなんのことやら。
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