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 ツーミンは「グウゼン〜! 天国一の気まぐれ贔屓神! やっぱり勝手に加護与えとったんか!」とステータス画面を前にピョンコピョンコとはね回って文句を言っていた。  確かに加護がある。  知らない間に加護を貰っていたらしい。流石優しいグウゼンだ。神殿を見つけたらいち早く祈りを捧げよう。 『ほんまアイツの善人贔屓は盆暮れ正月に会ったおじいちゃん並みやで……!』 「ツーミン。ドリンクバー、使いてぇ。タナカのやつ……コーヒー作りてぇ」 『あ、せやな! ほなドリンクバーってとこ触ってみー』  言われるがまま文字に触れると、ファミリーレストランで見かけたドリンクバーとよく似た物が画面に写った。  しかし飲み物が出てくるところには、肝心のドリンクの種類が書かれていない。  無言でツーミンを見つめると、ツーミンはピョンッと一斉の肩に乗った。 『一斉はんが出したい飲み物を想像して、ボタンに触れるんや! コップとか、入れもんもちゃんと想像するんやで〜』 「へぇ……俺の想像、な」  そう言われて、頭の中にごく普通のコーヒーを思い浮かべてみる。  喫茶店には行ったことがない。  ファミリーレストランに行った時、兄貴分が飲んでいたコーヒーだ。  白いカップに黒いコーヒー。  なぜカップをお皿に乗せるのか、理由はわからないまま死んでしまった。 ≪──昔はカップの飲み物をソーサーに移して飲んでいたんだよ≫  そう思っていると、ふと、知らない声が知らない知識を語り始めた。 ≪でも今はミルクやお砂糖、スプーンを置いて提供したり、かき混ぜた時に零れた中身を受け止めるための器だねぇ≫  ──あぁ……タナカの声か。  一斉は自然と理解した。グウゼンがインストールした立仲の知識は、本人ボイスでお届けされるようだ。  まるで本人が脳内に住んでいるようで頭に入りやすい。  のほほんとした中年男性のどこにでもある声も、なんとなく落ち着く。 「ん。皿は必要、だ」  カップだけの想像にそっとソーサーを添えてから、一斉は画面のボタンを押す。  瞬きするほどの一瞬のあと。 「おお」 『成功や〜!』  いつの間にやら、上質なシーツの上に一斉が思い浮かべた通りのコーヒーがパッ! と現れていた。  ペッペケピー! とファンファーレを鳴らして拍手をするツーミン。  確かに間違いなくコーヒーである。  カップもソーサーもスプーンもあるし、湯気が立ち上る温かそうな黒い液体からは豆のいい香りが漂っている。  感情がわかりにくい一斉も、つい感動してローテンポな拍手をする。  これならカフェはさておき、ひとまずコーヒー屋さんにはなれそうだ。  なんとなく疲れたような気もするが、気のせいだろう。確信しない程度の違和感ならなんの問題にもならない。  ただ出現場所は考えていなかった。  白いシーツに鎮座するカップは、ツーミンが喜ぶたびに微かに揺れる。 「……ツーミン、お客さん、一号な」 『ほっ!?』  一斉がそっとカップを差し出すと、ツーミンはなぜか飛び上がって肩の上からコロリと転がり落ちてしまった。  なんだ。なんでビックリした。顔が怖いとかなら慣れてくれ。

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