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予想外過ぎてビックリだ。
流石の一斉も思わず声を上げ、微かに驚きを表情に出してしまった。
それにも構わずスリスリスリスリと頬ずりをし、ウキウキとはしゃぐ還暦超えの皇帝。大国の主。髭がくすぐったい。
しかもなにがよかったのか説明すらしてくれないのでなにがなにやらわからず、一斉にとってはただ上機嫌の皇帝に髭で首元をくすぐられる脱走耐久レースの開始である。
「ほほほっ! ジェッゾ!」
「は」
「この利もワシの気に入りようもそれらの理由もお主、言わずともわかろう。よって命ずる。お主──イッサイと契約せい!」
「はっ?」
「イッサイを帝国臣民に迎える!」
「はっ!?」
「特権階級ハンターが管理する召喚獣なれば個として自由を与えても問題あるまい? 必要とあらばワシの名を出せ。誰が物申そうが軽く捻ってしまえ。ワシとお主が後援者なら先々能力が漏れようが表立って漬け込む愚か者は多くないはずじゃ。堂々と支援金も出せよう。詳細な制約は必須じゃがの」
いやそうだがそうでなくて。
曰くクールなジェゾがガパッ! と口を開いて無言で凝視するが、皇帝は止まらない。止まらないし止められない。
一方的に話し続け怒涛の勢いで帰化についての説明と今後の行動をあれこれペラペラ命ずると、肘置きにゴン、と肘をついてニヤリと悪どい笑みを浮かべる。
「くく、愛い男と極上のエールを逃す損失は甚大じゃあ〜ぞ〜……高待遇でなんとしても我が国に根付かせてくれるわい」
──とまぁ、そんなわけで。
皇帝陛下の決定は絶対のもとビール、じゃない。一斉は、晴れてジェリエーロ帝国臣民へと迎えられた。
ドリンクの力は凄い。
なんせ皇帝を懐柔できるのだぞ? 黒ローブたちは思い直してくれ。
ドリンクバーは便利で凄い。
なんとも言えない顔で困惑するジェゾとノリノリの皇帝がしばし議論したものの、結局は皇帝に言いくるめられてあれよあれよと再契約。
ジェゾは始終複雑そうにしていた。
拾った子猫を世話しただけのつもりだったのに、うっかり召喚獣の飼い主である。
無理もない。召喚獣を召喚するにはそれなりの対価や技術、知識やジョブなどが必要で、それが一番の難所とも言える。
本来は召喚術士 でないジェゾが、便宜上召喚獣としてやってきただけの一斉と契約。
意味がわからない。
めちゃくちゃだ。なんだこれ。
『一斉は〜ん! ドリンクバーのレベルが上がったで〜! 付与効果もマシマシ!』
そして次々と命じられて動かされ追いつかない一斉の頭の中には、ツーミンの声がパッパラパ〜! とポップに響く。
ああ、もう、自由すぎる。
(けど、別に嫌いじゃねぇって……俺も問題、かもな)
──止めようと思わないから。
考えるのを諦める程度に騒がしい現状を眺めながら、一斉は一人こっそりと脳内でごちた。
ジェリエーロ帝国の皇帝は、強引だが話のわかる超行動派で、親しみやすい皇帝である。
[アソヒスーパードライ]
苦味と甘みを抑えたスッキリとキレのあるドライビール。これを前に「アソヒ」と振られたらすかさず「スゥパァドラァァァイ」と答えるのが礼儀。皇帝陛下のお気に入り。
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