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スーツ、ワイシャツ、ネクタイ、靴下、休日服、スウェット、下着、靴。必要最低限の衣類を買っただけなのに、荷物は結構すごくなった。さすがにこれを持って病院へ行くわけにはいかないので、一度マンションへ荷物を置きに戻ることにした。
時間がちょうど昼時だったので、ネオン街のカフェでサンドイッチとコーヒーを買い、部屋に戻る。
スーツとワイシャツは皺がつかないようにハンガーにかけ、行儀は悪いがスマホを片手にサンドイッチを食べる。スマホで見るのはウィークリーマンションだ。
確かに、神宮寺はいつまでいても構わない、と言ってくれているが、そんなにいつまでも甘えるわけにはいかないだろう。なので、できればウィークリーマンションを見つけたいところだ。
ざっと見た感じ、当然と言えば当然だが、普通のアパートやマンションよりも数万円高いようだ。家具や家電がついているのだから仕方がないが。
その家賃を見ると、安いビジネスホテルに連泊するのと対して変わらない。一ヶ月ならいいが、それが何ヶ月も続くのは正直痛い。掃除の手間を考えるならば、調理はできないがビジネスホテルに泊まった方がいいのでは?と思ってしまう。
貿易事務は、確かに他の事務職に比べて給料はいい。専門職となるためだ。しかし、かと言って金に糸目をつけずになんでもできるほど給料がいいわけではない。
ゆえに、そんなに高いところに住み続けるというのは遠慮したいところだ。しかし、この場合の難点は賃料もだが、立地に問題があると言えるかもしれない。
ネオン街は当然のことながら商業地であり住宅地ではない。ゆえにマンションといったものが極端に少ないのだ。直生のアパート周辺と神宮寺のこのマンション周辺くらいしか住宅というものがない。そのため、この近辺にウィークリーマンションはなかった。
色々なサイトで探してみるが、結果は変わらない。つまり、ない、ということだ。立地が悪すぎる。ネオン街に固執するのならウィークリーマンションは諦めなくてはならない。
直生は小さくため息をつくと、ゴミを捨て病院へと向かった。
病院へは午後の診察が始まって間もなかったが、待合室には数名の患者さんが待っていた。
病院でも今後のことを考える。ウィークリーマンションがないのなら、普通のアパートやマンションを探すしかない。スマホでいくつかの住宅情報サイトを見るが、ネオン街周辺のアパートやマンションはない。確かにパイは少ないが。
残念なことに春の入学・入社シーズンを終えたばかりなので、引越し業者は空いているだろうが、肝心の物件がない。タイミングが悪いとしか言えない。
こうなると多少高くても立地を取るか、多少立地は悪くても賃料を取るか。どちらかしかないのだ。そこへ行き当たって直生は今日何回目かのため息をついた。こんなことで住むところなんて見つけられるのだろうか。
どちらも難しくて、そう思うと直生はまたため息をついた。とても見つけられる気がしない。
そんなことを考えているうちに名前を呼ばれた。
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