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たこわさを口にしながら答える。
「で、その普通のアパートもない、と」
「うん。アパート、マンションとも見事にゼロ」
「神宮寺さんはその辺なんて言ってるんだ?」
「急がなくていいって。家はもう一つあるからいつまでいても構わないって」
「家がもう一つあるってスゲーよな。そんなセリフ一度言ってみたいわ」
「まぁね。でもさ、だからと言っていつまでもってわけいかないじゃないか」
「まぁ、そうだけどさ。かと言ってないものは変わらないし。少し言葉に甘えてじっくりゆっくり探せば?」
「でも、そうすると元いたところに戻るかどうするか、っていう問題にもあたるんだよね」
「あ、そうか。ん〜。新しいアパートが出来るまで数ヶ月だから、それまで甘えさせて貰えば?」
「そんなに甘えていいのかなぁ」
火事になった跡を綺麗に更地にして新たに建て直す。新築とはいえ数ヶ月もあれば建つだろう。正直、すごく中途半端だと感じる。もっと短いのなら少し遠くてもウィークリーマンションを探してキツい通勤を頑張るか、このまま神宮寺に甘えるかする。
逆にもっと長くて一年とかかかるのであれば、通勤圏内で良い物件が出るのを待ってそこに引っ越す。その後は元いたアパートに戻ってもいいかもしれない。その場合の引越し費用はかかってしまうが。
しかし、数ヶ月のために新しい場所でアパートやマンションを探すとなると考えてしまう。仮住まいとしては短すぎるのだ。
「でも実際どうよ? 前いたところに戻りたいと思うの?」
「立地がいいからなぁ。通勤考えたらね」
「通勤なら、俺の辺りだっていいんじゃん? 通勤時間大差ないだろ」
「そうだね」
「まぁ、でも時期的に空いてるところって少ないよな」
「だろう? それが問題なんだよ。あ〜やっぱりウィークリーマンションがあるといいんだよな。家電なんかも戻ってから買えば済むし。今引っ越して家電も買うっていうと出費が痛い」
「そうだな。一時金貰ったって全て賄えるわけじゃないからな。やっぱり、少し神宮寺さんに甘えるか」
「でも、申し訳ないよ」
「ごめんな、俺のとこ来いって言えなくてさ。少しの間ならいいけど、1Kじゃ狭すぎて」
「それはいいよ。わかってるから。まぁ定期的にサイト見てみるよ」
「俺の方も近所で空きが出たら知らせるよ」
「うん。お願い」
「きっとさ、運命の番だから助けてくれるんじゃん?」
ビールが入って陽気な和明は、神宮寺のことを運命の番だとすっかり受け入れている。
「どうやって運命の番だなんてわかるんだよ」
「遠くにいたってお前の香りだけするんだぞ? 運命の番をことごとく否定してたお前にはそうかもしれないが、普通じゃあり得ないだろうが」
「でも、運命の番だとわかったとして、嫌じゃないかな? こんな平凡で印象の薄い男でさ」
「も〜。お前は本当に!」
和明はぷりぷりしながら、唐揚げをばくばくと食べている。もう後一個しか残っていない。
確かに運命の番だと和明に言われながらも否定していたのは自分だ。いや、医師に言われてもなお信じがたかったが。
「で、番になるのか?」
「そんなのわからないよ。運命の番だからって絶対に番契約しなくてはいけないものではないだろうし。何よりお互いのことよく知らないし」
「確かに相手のことを知らないと、番契約どころじゃないよな。でも、だから食事に誘ってくれたんじゃん?」
「多分ね」
「うわ〜、塩対応〜。なんだよ、お前は相手に興味ないのか?」
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