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第1話 傷心男とウリ専ボーイ(2)★
なにやら裏がありそうな提案だった。が、隆之は頷いていた。
見知らぬ相手についていくなど本来ならありえないけれど、自暴自棄になっていたこともあったし、今は誰でもいいから話を聞いてもらいたい気分だったのだ。
連れていかれたのは裏路地にひっそりとある店で、看板には《ミックスバー》と英語で表記されていた。
小粋なジャズの流れる店内には、多種多様なセクシャリティの客がいるようだったが、みな楽しげに酒を交わしており不思議と居心地のよさを感じる。
「さ、ひとまず飲んで飲んで! ノンアルでいいんだったら俺も付き合うからさっ」
カウンター席に腰かけると、青年は慣れた様子で注文をした。
やがて出されたカクテルを受け取って乾杯する。チンッと涼やかな音が響いた。
「こんなこと……初対面の、しかも君みたいな若い子にする話じゃないんだが」
胃にアルコールを流し込んで、しばらくしたのちに切り出す。
青年が話しやすい場を作ってくれたおかげで、一言口にしてしまえば、自分でも驚くほどにすらすらと言葉が出てきた。
ところが、同時に酒の勢いも止まらず、
「おーい、お兄さん大丈夫? あーどうしよっかなこりゃ」
――寒い。お願いだから一人にしないでくれ。
そこで、意識が途絶えたのだった。
不意に温かな感触を感じて隆之は目を覚ました。ぼんやりと霞む視界のなか見えたのは、どこか上気した顔をしている青年の姿。
(そうだ、俺はこの子とバーで……)
少しずつはっきりしていく思考回路。と、同時に下腹部の違和感に気づく。
「ハハッ、隆之さんのチンポ……でかすぎ――」
切なげな声が聞こえてハッとした。
いつの間にかベッドに仰向けになっていて、その上に青年が跨っているではないか。しかも、彼は自らの後孔に隆之のものを宛がい、これから挿入しようとしているところだった。
隆之は慌てて起き上がろうとしたものの、泥酔しているのか、体が思うように動かない。
「……っ、どうなってんだ」
「あれ、意識はっきりした?」
青年は悪びれるふうもなく、にっこりと微笑みかけてくる。そして、隆之の腹筋に手をついて腰を落とし始めた。
「お、おいっ、どこに挿れて――」
「ん? 男なんだからお尻の穴に決まってんじゃん」
ぬぷっ、という卑猥な音とともに青年の中へ亀頭が潜り込む。その感覚に、隆之はぶるりと体を震わせた。
(嘘だろ……俺、男と!?)
こんなものまったくもって笑えない。犯されているも同然だ。隆之はなんとか抵抗しようと試みるも、やはり体に力が入らない。
青年は艶っぽい笑みを浮かべながら、こちらを見つめてくる。
「俺に全部任せてよ、気持ちよくしてあげるから。ほら、見てて――隆之さんのでっかいチンポ、入ってっちゃうよ?」
その瞳は妖しい色香を放っていた。
屹立が熱くて狭い内壁を押し広げながら、隆之の意志とは無縁に奥へと進んでいく。あっという間に根本まで呑み込まれてしまい、隆之はただ愕然とした。
「どう? お尻んなか、きゅうきゅう狭くて気持ちいーでしょ?」
青年がゆるゆると腰を動かし始める。
それは、今まで味わったことのない感覚だった。彼の体内は蕩けそうなほどに柔らかく、それでいて肉厚で、こちらに絡みつくようにうねっている。正直、気持ちがいい。
「くそ、ふざけんな……っ」
せめてもの気持ちで、隆之は吐き捨てるように言う。だが、青年には逆効果のようだった。
「ふうん、そーゆー態度取っちゃうんだ? まあでも体は素直みたいだけど……ハハ、萎えないでいてくれて嬉しいや」
イタズラっぽく笑って、さらに激しく腰を打ちつけてくる。その腰使いは巧みで、ますます自身が高められるのを感じた。
「あっ、ン、またでかくなった――カリ高なのすげーいい……」
青年はうっとりと呟きながらも、激しく腰を振りたくっている。そうやって責め続けられれば、こちらもいよいよ限界が見えてきた。
「待てよ、これ以上はっ」
「んっ、は……隆之さんのビクビクしてきたね? もうイキそ?」
「っ……」
「アハッ強情っぱりなんだ? じゃあ、俺も一緒にイっちゃおっかな……」
言うなり、青年は自身に手を伸ばして扱きだす。途端に中がぎゅうっと収縮し、さらに締めつけが強くなった。
隆之は眉根を寄せて歯を食い縛るも、押し寄せてくる快楽には抗えない。程なくして達してしまい、また青年も絶頂を迎えたようだった。
「へへっ……どろっどろのザーメン、ご馳走様」
満足げに言いながら、萎えたものをずるりと引き抜く。
「なーんてね。ナマでしたら、オーナーに怒られちゃうや」
意識がぼんやりとしていてわからなかったが、コンドームを被せられていたらしい。青年はそれを指先で摘まむと、こちらに見せつけるようにして揺らす。精液溜まりにはたっぷりと白濁が溜まっていた。
「ゴムんなか、すっご……いっぱい出たね?」
「この、バカにしてんのか」
「ええ~っ、気持ちよくなってくれて嬉しいよ? ちょっとはスッキリした?」
そう訊く間にも、ベッド脇に置かれていたティッシュを手に取り、丁寧な手つきで後処理をする。今になって気がついたが、ここはビジネスホテルの一室らしかった。
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