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「先……っ」
すぐ口に焼きおにぎりを突っ込まれて言葉にならない。
「タク、目立ってるから座れ」
半個室になってはいるが、確かにいくつか好奇の目を感じて俺は素直に腰を下ろした。
そのまま黙って目で訴えつつおにぎりを食べる。なのに、
「あ、すいませ〜ん!焼酎緑茶割り下さ〜い!」
俺からの無言の圧力も、俺が十九歳 なのも気にしないで、先輩はにこにこと笑って店員に追加のお酒を注文した。
そして、何事もなかったかのようにパクパクと料理を口にする。
「こっちも食っちゃうぞー!」
笑いながら本当にいつものように食べる姿に堪えきれなくなってきて、俺は残りのおにぎりを一気に口に入れた。
ジョッキを手にしてお茶(俺はダメだってそれはうるさかった)で一気に流し込んでダンッと音をたてる。
「先……」
「お待たせしましたー!こちら焼酎緑茶割りですっ!!」
今度は元気な店員に遮られて思わず唇を噛み締めてしまった。
その間に先輩は笑顔で店員に空いた皿を渡してお礼を言うと、一気にお酒を飲み干す。
「ノンケはちゃんと女と恋愛してろ!変に勘違いしてこっちを試そうとすんな!」
「いや、だから……」
「やめとけ」
真剣な目。
動きを止めてただこっちを見てくるだけなのに、俺まで動けない。
「せっかく女もイケて幸せになれるんだからこっちに来る必要なんかねぇよ」
言い切ってから笑ってコロッといつもの雰囲気に戻した先輩を見て立ち上がる。
小さな後頭部を掴んでキスをすると、先輩はこっちを少し睨んでため息を吐いた。
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